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2008'09.07 (Sun)

美術館に行こう!

サントリーミュージアム天保山で開催中の「美術館に行こう!」というミッフィー(=うさこちゃん)な展覧会に行ってきた。
もともと行く気はあんまりなかったんだけど、大阪まで出かけるついでにどこか行くなら…と考えたときに一番行きやすかったのがここだったのと、「ディック・ブルーナに学ぶモダン・アートの楽しみ方」という副題が付いてたので、モダンアートについて見方をミッフィーに指南してもらうのも面白いかなあと思って足を伸ばすことに。
結論から言うとモダンアート目当てで行くには物足りなさすぎ。前半が「うさこちゃん びじゅつかんへいく」という本をもとにしたモダンアート指南的な内容だったんだけど、これってモダンアートなのか?というような絵があったり、このテーマのところにこの絵って合ってるんだろうか…と疑問に思うところもあったり。うさこちゃんはかわいかったけど。
面白かったのは、ディック・ブルーナがレジェやマティスに影響を受けてたってところかな。たしかにそういわれてみるとそうだなー。レジェの作品は油彩があったんだけど、この人はもっと平面的な版画の方が合ってるような気がする。ブルーナの影響源としては直接言及されてなかったけどカンディンスキーなんかも近いんじゃないのかなあと展示作品を見ながら思った。
前半の展示が終わったところで、展望スペースの壁一面にミッフィー絵本の表紙が並んでて、かわいーと思いながら眺めてた。海外版で文字が日本語じゃないやつ(オランダ語?とか英語とか)があったり、初期版ミッフィーがなんか変なやつだったり。あんなのミッフィーじゃなーい。
後半の展示はミッフィー絵本の原画とかその他のブルーナキャラの絵がたくさん。1枚の絵を仕上げるのにあんなに手間をかけてるんだー。それから意外だったのが推理小説の表紙を飾ってたくまさんキャラ。ミステリーなのにこんなにかわいくていいのか。ブラックベアというシリーズのペーパーバックのお手軽ブックで、旅行のときとかちょっとポケットに入れて持っていって読めるというコンセプトのものらしい。いいなー、これ欲しいー。
実際に出版された本もたくさん展示されてて、ここが一番楽しかったかも。シリーズものの小説だったらその主人公をマスコットキャラみたいな感じで様式化して描いて、いつも表紙のどこかにそのキャラがいるみたいなデザインにしてて、ユーモアがあってかわいいんだな。
会期終了が近いこともあって図録が既に売り切れたのが残念。

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2008'09.01 (Mon)

宮沢賢治展〜賢治と絵本原画の世界〜

大丸ミュージアム神戸で開催中の宮沢賢治展へ行ってきた。
六甲アイランドへ行ったついでに、大丸ミュージアムパスカードを持ってるのでせっかくだしってことで。
宮沢賢治に入れ込んでる人が多いことはよく聞くけど、私はそれほど興味がない。おかしいなー、読書好きだったはずなのに、どうしてこういうメジャーどころをすっ飛ばしてるんだろう…。教科書に載ってた「やまなし」くらいかなあ、まともに読んだ記憶があるのって(これが宮沢賢治だってことも完全に頭から抜け落ちてたし)。あとはあらすじは知ってるけど読んだかどうかまでは記憶にない。
前半は写真とか原稿とか書簡とか賢治ゆかりの品の展示が続く。原稿といっても複製だったりして、ありがたみが…いや、複製でも筆跡とかわかるのは面白いっちゃー面白いんだけど。中盤で実際に出版された本が並べられてたあたりでようやくテンションが上がってきました。
そして後半、絵本原画が並べられてるコーナーに来て一気にボルテージが上がったね。わーい、楽しい〜。絵本作家さんってそんなに詳しいわけじゃないけど、かわいい絵やら面白い絵がたくさんあった。
見てるときに全部の絵の作家名を確認したわけじゃなかったので、あとからチラシを読んで、和田誠があったのか…とかいわさきちひろなんてあったっけ?とかいろいろ思うことが。村上勉の絵を久しぶりに見たなあ。かえるかわいいよ。
小林敏也って人の絵がおもしろかったな。出口に物販コーナーがあって絵本も山ほど売ってたんだけど、その中に小林敏也の本もたくさん。ライフワークとしてやってるらしい。でも原画を見たときほどのインパクトがなくて…。絵本原画ってことは印刷物が成果物なわけで、原画はあくまで制作プロセスの途中のものなのであんまり重視しすぎたくないんだけど、あの原画はよかったなあ。
4894190095やまなし (画本宮沢賢治)
宮沢 賢治
パロル舎 1985-07

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そのあと元町の洋書屋さんへ。このお店、8月頭に親会社が倒産しちゃってしばらく店を閉めてたんだけど、ひとまず再開してるみたいです。といってもお店の存続は困難みたいで、在庫処分みたいな形でしばらく営業は続けるけど、ある程度したら閉めちゃうらしい。3ヶ月くらいをめどにって言ってたかな?閉店セールで色々安くなってたし愛着のあるお店だったのでお餞別の意味も込めてちょこっとお買い物。
親元の会社ってのが洋雑誌取次の大手だったので、この倒産であちこちの書店で洋雑誌の扱いが中断してる。いくつかのタイトルは他の取次会社が引き継ぐようだけど、当分はよくわからない状況が続くのかなあ。最近海外のアイドル(といっても日本のアイドルみたいな雰囲気じゃないけど)にはまってて、アメリカの雑誌もよくチェックしてるのに困ったわ。雑誌以外の書籍類は他にも取次いでる会社はあったから大きな混乱はなさそうだけど、雑誌は大打撃だよ。8月中は自分がチェックしてる範囲では目に見えた影響はなかったんだけど(物によっては既にストップしてた)、昨日よく雑誌を買う店に行ったらいつもなら入荷してる本が置いてなかったのでそろそろ影響が出始めてるんだろうか…。

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2008'08.31 (Sun)

黒田清輝展

本日最終日の黒田清輝展@小磯記念美術館へ行ってきた。
行くつもりでいたのに結局最終日…ってこのコメントも聞き飽きたよね。
黒田のことは特別に好きってわけじゃないんだけど、作品に対する思い入れはなくても人としては嫌いじゃない。といっても人柄なんてろくに知らないんだけどね。
解説読んだりした受け売りなんだけど、「構想画」を制作したいと思いつつ、結局それはかなわなかったそうで、それを目指したであろう作品が幾つかあるんだけど、そういうの見てるよりも、スケッチ感覚で描いた小品とかの方が親しみが持てて好きなんだよなー。本当のところはどう感じていたのかわからないけど、頭では難しいことをやりたいと思いつつ、どこかでそういうささやかな作品作りを楽しんでたところがあったんじゃないだろうかと思ったり。
今回の展覧会は東京の黒田記念館(東京国立博物館)から小物も含めて約150点来てた。これだけまとめて黒田の作品を見るのは初めてだ。
代表作の「湖畔」や「知・感・情」はきてたけど、「野辺」がなかったのが残念だ。前に見たことあるからいいけど。他に印象に残ったのは、「花野」と「雲」かな。修行中の人物デッサンとかの習作を見るとたしかにうまいなあと思うんだけど、なんでだろ、あんまり人物画は好みじゃないなあ。風景画がいいな。人物画でも人物の内面とか表情よりも空気とか光とかそういうものの表現がおもしろいかも(解説の受け売り)。
説明パネルに黒田のモラル感覚は女性と子供に関してはフランス的だったというのがあって、どういう意味なんだ?と突っ込みたかった。
展示室内で誰かが藤島武二は黒田の弟子で、藤島の弟子が小磯で…っていう関係なんでしょ?みたいなことをしゃべってるのが聞こえてきて、心の中で違う違うっ!と叫んでました。黒田と武二は同世代なんだよ〜。肩書きこそ黒田の方が上で、武二が黒田の影響を受けた部分もあるけど、師弟関係なんかじゃないってば。と武二ファンの人が言ってます。
同時開催で小磯良平の作品選もあったので見てきた。何度も来てると見慣れちゃうけど、ちょこちょこ入れ替えもあるので、こんな絵もあるのかーと思いつつ軽く流す感じで。最後にあった3人の外国婦人ってのがかわいかったな。
そして、売店で黒田じゃなくて武二の図録を買って帰った。去年ここで武二と小磯展をやってたときに、図録は保留にしてたんだけど、それを今回手に入れたわけだ。

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2008'08.11 (Mon)

サロメからの連想は続くよ

黄金のロバについて追っかけるのはとりあえず置いといて。ヴェルレーヌとボードレールからドビュッシーに心は飛んでます。まあ飛ぶだけで実際に行動には移してないんだけど。
最初は「悪の華」と「艶なる宴」のフランス語の単語の意味を調べてた。ネットの日仏翻訳は簡易なのしか見つからなくてニュアンスが掴みにくかったんだけど、英仏辞典に詳しいのがあったのでそっちを引いてみた。「悪の華」はわかりやすくて、The Flowers of Evilって単純に英訳されてるらしいんだけど、「艶なる宴」の方がなかなか難しくて。単語自体はそうでもないんだけど、どうもこの「Fetes Galantes」ってのがヴェルレーヌの詩に特有な言葉ではなく、もっと一般的な言葉らしいということがわかってきて、さらには詩の元になった絵もあるようで。ってことは出てきた結果が何に対してのものなのかわかんないよーと一時は混乱状態に。知りたいのはヴェルレーヌのことなのに。
日本語表記についても「艶なる宴」以外に「艶やかな〜」とか「雅やかな〜」とか「雅な〜」とかずいぶんと表記がばらばらなことがわかってきた。その上さっき判明したようにどれに対する訳語なのかもわかんない。これ以上の追求はネットでは無理かなと思って、ひとまず検索は打ち止め。
そんなことをなんとなく心に留めてたところ、たまたま手持ちの本の中に目ぼしい記述を発見。ちょっと本棚を整理しようと思って手に取った1〜2年前のオルセー美術館展の図録。展覧会で直接ヴェルレーヌに関わるような何かはなかったと思うんだけど、解説の中にヴェルレーヌのことが出てきて、詩の元になった絵もモノクロで小さい図版だけど載ってた。
通称「雅宴画(フェート・ギャラント)」というらしい。18世紀のフランス(ロココ時代?)にヴァトー(またはワトー)が確立させたスタイル。森や野原で貴族の男女が優雅に戯れる図。これって実は結構有名なのかしら。
最初に「雅な宴」というような題材の絵があると聞いた時点ではまったくぴんときてなかったんだけど参考図版を見てるうちに記憶が戻ってきた。それに「雅宴画」って言葉も。たしかどこかで聞いたことがある。そうだ、モンティセリだ!ヴァトーに影響を受けたのはヴェルレーヌだけじゃなくて、自分の知ってる人の中にもいたんだ。そこからゴッホにも繋がるんだよね。なんか面白いなー。ヴァトーの時代はロココ様式が流行った時代になるらしい。フランスの歴史はぼんやりとしか知らないけど、ロココって貴族の田園趣味とかそういう時代なんだっけ。
ロココリバイバルがアールヌーヴォーに繋がったというような話をどこかで聞いた気がするけど、モンティセリもロココリバイバルの一翼を担ってたんだろうか。
音楽家ではドビュッシー以外にもフォーレなんてのも詩人にインスピレーションを得ているらしい。ドビュッシーは結構強烈な性格だったみたいで、伝記を本屋でチラッとめくってみただけで面白そうだなあ。サティとの関係も面白そうだ。手元に世紀末の音楽に関する本があるので、まずはそれを読んでみて(だいぶ前に買ったのに全然読んでない)、さらに興味が深まればCDを買うなり伝記を読むなりしてもう少し突っ込んでみようかな。牧神の午後とかディアギレフやニジンスキーにも繋がるみたいだし、なんだかわくわくしてきた。
4276201349世紀末の音楽 (音楽の万華鏡)
海野 弘
音楽之友社 1995-07

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こうやって今までに得た色んな情報が繋がっていく体験って気持ちいい。だからやめられないんだよなー。今はまだ19世紀末を中心に前後1世紀ずつくらいしかカバーしてないけど、できることならもっと過去にもさかのぼりたいんだよね。でも19世紀周辺だけでもボリュームたっぷりなのにこれ以上どうしたらいいんだ。気が散りやすい性格でいろいろオーバーフロー気味なのが困った。
CDショップでドビュッシーの棚を見てみたんだけど、たくさんあるなあ。その中で特にヴェルレーヌなどの詩を由来とする曲を探すもどうやって選別したらいいのかわからず挫折。もうちょっと知識をつけてから再挑戦しよう。詩だけじゃなくて絵画も元にしてるんだろうか。

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2008'08.04 (Mon)

前田寛治のパリ

なんとなく行きやすいからという理由で大阪市立近代美術館(仮称)心斎橋展示室でやってた「前田寛治のパリ」展を見てきた。またしても最終日。夕方に。最近すっかり出足が遅いです。こんなんじゃ混雑必至な展覧会は行けんな…
今回の展覧会は、予備知識としてはエコールドパリの時代とかぶるらしい(1920年代)というのくらいしかなくて、前田寛治って人のことはほとんど知らずに出かけた。見た感想は、理論派だったのねーというとこかな。
活躍した時代が佐伯祐三とほぼ同時期で、夭逝したのも同じらしい。交流もあったらしいけど作風というか姿勢は正反対よね。
前田寛治以外の同時代の作家の作品も展示されてて、ヴラマンクと里見勝蔵が並んでるのを見てちょっと嬉しかったり。この二人けっこう好きなのよねー。
前田寛治に関してはなんともいえないなあ。特に気に入ったわけでもないけど面白くなかったというわけでもないし。理論って自分が理解できる範囲で展開されてるものはなるほどねーって思えるんだけど、不勉強でよくわからないところを見せられてもついていけないというか。これは自分の問題なんだけど。といっても前田寛治の絵が理論だけで構築されてるかっていうとそうでもないんだろうし、これはおもしろいなとかかわいいなという絵もあった。
次回は大阪の女流画家を集めた展覧会らしい。これは面白そうかなー。
そういえば今度、大阪市立美術館(こっちは仮称とか準備室とかじゃなくて、ちゃんとしたところ)で佐伯祐三展をやるようで。

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2008'08.01 (Fri)

サロメの本棚・追記

前の記事について、推敲不足で書いちゃったせいで後から細かいところを修正しまくってますが(画像を追加)、さらに追求したいことが出てきたので書いておく。
2枚の絵に出てくる合計7つの本のうち、ひとつだけ英語なのは何故なんだろう。そして、それ以外のすべてがフランス文学なのは何故なんでしょうか。
たしかワイルドの「サロメ」って最初はフランス語で発表されたんだよな。その辺が関係あるのかなあ。あれ、ビアズリーの挿絵って英語版が出版されたときだっけ?混乱してきたので調べなおしてみた。
まず、ワイルドは戯曲「サロメ」をフランス語で書く。サラ・ベルナールが上演することになったけど、お上からの検閲やら何やらで舞台はお蔵入りに。上演はされなかったけど出版はされたみたいで、そのフランス語の作品に対してビアズリーがインスピレーションを得てサロメの絵を描く。「サロメ」の英語版を出版することになってビアズリーが挿絵を担当する。って流れでOKでしょうか。
英訳したのはワイルドじゃなくてボジー(アルフレッド・ダグラス)だと聞いたけど、出版に際してワイルドはどの程度口出しできたのだろう。挿絵画家としてビアズリーを推薦したのはワイルドらしいのに出来上がりには不満だったらしい。途中で検閲したりやっぱり別の人に描かせようとかそこまでの権限はなかったんだろうか。
検閲に関してはワイルドが介入できなかったにしても、出版社の方からは口出しされてたみたいだけどね。またはもっと上の方からかもしれないけど、何枚か出版できない絵があったらしいし、本自体がそういう扱いを受けてたとか。
まあそんな薀蓄はさておき、ここで気になったのが、ビアズリーが挿絵を描いたのは英語版に対して。ビアズリーもワイルドもイギリス人。でも挿絵の中の本は主にフランス語。最初に出版されたのはフランス語。ややこしいな。
ともかくですねー、あの本棚のラインナップがすべてビアズリーの意思だったとして、この7つのタイトルが選ばれた理由ってのが気になるんだよな。イギリスにはそれにふさわしい書物がなかったのか。挿絵の中の小さな文字だから特に国に拘る必要はなかったのかな。あくまで暗喩であればいいわけで、気づいた読者がニヤリとしてくれればいいとか。
この時代のフランスとイギリスの文化的な交流ってどうなってたんだろう。ここに出てきたタイトルは英訳されてたんだろうか。フランス語で書かれたタイトルを見てわかる人は多かったんだろうか。少なくとも知識人はそうだったのかもなあ。この時代にイギリスとフランスを行き来してる人は結構いたみたいだし。ワイルドもそうだし。フランスとイギリスって海を隔てているとはいえ距離的には結構近い。でも関係は複雑よね。
デカダンスとかダンディズムとかがワイルドやビアズリーの属する世界なんだと思うけど(それがすべてではないかもしれないけど、ある一面を切り取ったときにはそうでしょう)、そこで思い浮かぶ文学作品ってのがやっぱりフランスに多いってことなのかなあ。ビアズリーがワイルドの「サロメ」をフランス語で読んでいたってことはつまりフランス語に精通していたわけだし、フランス文学にも造詣が深かったのかも。
イギリスはヴィクトリアンだっけ?表向きは品行方正で紳士淑女らしい振る舞いがよしとされてた時代だと思うんだけど、それに対する反動がワイルドとかビアズリーなのかなあ。というようなことをどこかで読んだような気がする。フランスはベルエポック、アールヌーヴォー、フレンチカンカン(どんな連想だ)ってことで、もっと自由な雰囲気。建前はあったかもしれないけどそこまで厳格なイメージはないな。あくまで私の勝手な想像だけど。
なんかあんまり結論めいたものに達してない気がするけど、きっとビアズリーにとってのサロメのイメージとフランス文学の特にデカダンとかスキャンダラスな作品ってのが通じるものがあったのかなあと。イギリスは文化的にそういうものがあんまり表立ってあらわれなかったからフランスばっかりになったってことだろうか。
そしてやっぱり気になるのがひとつだけ浮いてる感じがする「黄金のロバ」。これ、展覧会で実物を見たときにも、なんでこれだけ英語なんだろう…と不思議に思ったんだけど。いざ調べてみるとさらに時代まで全然違ってて、あえてここに並べた理由ってなんなんだろうなあと気になってしまう。きっと世の中にはビアズリーとかワイルドの研究者は山ほどいそうだから調べてる人はいそうなんだけど。この古い物語が19世紀末に話題になるようなことがあったんだろうか。
19世紀末との繋がりまではまだ追いきれてないけど、ローマ時代やギリシャにも世紀末的退廃はあったようで、そういった傾向の中にこの物語も含まれるのかな?と思ったけど、どうなんでしょう。とりあえず際どい描写があるって部分が肝なのかなあというところくらいしか今のところはわからない。ビアズリーの時代にもそういう点で有名だったんだろうか。
他に調べててわかったことは、この作品に「アモルとプシュケ」のエピソードが含まれてるってことで、それなら確かに19世紀にも好まれてたモチーフと考えられるかなあと思えるけど、もしかしてそいういうこと?
他の同時代の作品を差し置いて、これが選ばれた納得できる理由が欲しい!

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2008'07.29 (Tue)

サロメの本棚

こないだ注目してたビアズリーのサロメの絵の中に出てくる本のタイトルについて、絶対着目してる人がいるはずだ!と思って検索してみたらばっちり見つけた。
解説:その1その2
なるほどねー。これで謎が解けたぞ。
先日の展覧会で注目した絵は2枚。図録によるとそれぞれの絵のタイトルは「サロメの化粧I」と「サロメの化粧II」となっている。上記リンク先の解説によると1枚は未使用バージョンらしい。図録に詳しい解説はないんだけど、本来の挿絵として使われたのは片方だけってことかな?ほぼ同じ場面を描いていると思っていいのだろうか。
我が家にあるDoverの本には両方載ってる。この本はオリジナルのサイズに近いので文字が確認できるかなーと思ってチェックしてみたら、半分くらいは読めたけど、正確なスペルを判別しようとすると苦しい。廉価本だからそんなに印刷はよくない。
0486218309Salome: A Tragedy in One Act
Oscar Wilde
Dover Pubns 1967-06

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展覧会の図録は買ったけど小さすぎて見えないし、上記URLでも細かい字はつぶれちゃってる。それだけ字が細かいってことだ。よっぽど高精細な印刷でないと無理そう。ともかく、ぼんやり見える文字と自分の記憶と、そこから類推される本のタイトルや作家名から調べていけば、上記URLに書かれていることが正しいかどうかはだいたい確認できる。
ということでいろいろ調べてみた結果わかった、絵の中に書かれているであろう文字を並べてみる。

1枚目
Zola / La Terre=ゾラ「大地」
Les Fleurs du Mal=「悪の華」(ボードレール)

2枚目
Zola / Nana=ゾラ「ナナ」
Les Fetes Galantes=「艶なる宴」(ヴェルレーヌ)
Marquis De Sade=マルキ・ド・サド(人名)
Manon Lescaut=「マノン・レスコー」
The Golden Ass=「黄金のロバ」

どれも19世紀末に不適切な書物として扱われていたものらしい。不道徳とかお下品とか。ほとんどはサロメの時代にはあるはずのない本だけど(サロメはたしか1世紀とかその辺の時代の話だったよね?)そこは気にしない。
とりあえず上から順番に行ってみよう。
ゾラの「大地」は連載小説だったそうで、発表時には随分と物議を醸したらしい。農民小説ということだけど、骨肉の争いとか過激な描写があったりしたらしい。
ボードレールの「悪の華」はいわずと知れたデカダン詩集。背徳とか官能とか。
「ナナ」は主人公が高級娼婦で貴族や社会の腐敗を描いてるあたりで選ばれたのかな。
「艶なる宴」はヴェルレーヌの歌集。その内容が不道徳だったかどうかは不明だけど、ヴェルレーヌの存在自体がスキャンダラスだったみたいだ。ちなみにこの歌集の中の一篇、「月の光」をもとにドビュッシーが曲を作ったり、作曲家にとってのインスピレーション源としても有名らしい。
マルキ・ド・サドは説明するまでもないかな。著書は「悪徳の栄え」とか「ソドム〜(長いので正式名称は憶えてない)」とか。
「マノンレスコー」(プレヴォー)は確か「椿姫」でヒロインが死ぬまで大事にしてた本じゃなかったっけ?(うろ覚え)ストーリーは知らなかったんだけど、調べてみたらファムファタールものの元祖なのね。ということでここに入るのは納得。
ここまではだいたい18世紀〜19世紀のもので、ビアズリーとほぼ同時代と言っていいんじゃないだろうか。
最後の「黄金のロバ」(アプレイウス)だけ古くて、2世紀ごろの物語。何が不適切なんだろうと検索してたらこの物語を心理学的に分析した人がいるらしいと出てきた。ユングの弟子が書いたらしいけど、時代は合うのだろうか。関係ないかな?さらに調べてみると、内容にちょっと下世話なところがあるっぽい。でもわざわざ古い本を取り上げたんならそれなりに意味がないと…と思うんだけど、あらすじとか紹介文読んでもそこまで不適切書物って雰囲気はないんだよなあ。本文を読んでないからわからんけど。他に考えられる理由としては、もしこの当時から既にassに例の意味があったとすれば、単に字面だけでお下品ってことになるんでしょう。うーん、最後の説が一番有力のような気がしてきた。
ところでこのことを調べてて、出てきたサイトに

Note the Hogarthian technique of placing legible texts within the picture space that comment upon the subject depicted.


とあるのを読んで、そうそう、わかるなー、そこに注目するとは。これを書いた人とは気が合いそうだと思った。

追記:Doverの本からのスキャン画像を参考までに載せておく。
まずは未使用バージョン。ちょっとかすれてるけど何とか読み取れるかな。もう1冊読めそうで読めないのがあるけど、これが何なのかは不明。
20080731salome0001.jpg
次のが決定稿?これもナナとサドとマノンは比較的読み取りやすいかと。でもヴェルレーヌのはかなり苦しい。ASSもつぶれちゃってる。これは実物を見たときもそうだった。
20080731salome0002.jpg

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2008'07.28 (Mon)

「版」の誘惑

せっかく名古屋に来たんだしってことで、愛知県美術館の次に名古屋市美術館へ。ところが移動中に夕立発生。一応晴雨兼用の日傘は持ってたけど強い雨に耐えられるか不安だし雨宿りするべきか悩んだけど、あんまり時間もないので強行突破。ちょっと濡れたけどなんとか到着。
ここでは「版」の誘惑展が開催中。こっちはまだまだ会期に余裕あり。
前にどこかの美術館でチラシを見つけて面白そうだなーと思ってたんだけど、たしかに面白かった。「誌上のユートピア」もそうだけど、印刷とか複製とかってキーワードに弱い私。そりゃもうがっつり楽しませてもらいましたとも。
名古屋市美術館の開館20周年記念企画らしく、凝った展覧会だった。基本的に名古屋市の持ち物を展示してるらしい。博物館の持ち物だったり、個人蔵も一部あるみたいだけど。
展示作品数はそんなに多くなくて、一点一点じっくり見るって感じではなかったので鑑賞時間は短めだったんだけど、なるほどねーと面白がりながら見ることができるのが楽しかった。入り口で貰ったパンフレットを見ながら順番に眺めていくという流れなんだけど、それぞれ見るべきポイントみたいなのがあって、単純に作品として楽しむのもいいんだけど、その意味合いとかを考えるのも楽しかった。これも「版」なの?ってのがあったりしたし。
赤瀬川原平って名前は知ってるけど作品はあんまりよく知らなくて(少しくらいは見たことあると思うけど)、今回これがそうなのかーっていうのが展示されてて楽しかった。これが噂の…
リトグラフとエッチングとシルクスクリーンの印刷機や印刷用の道具が色々並んでるところが面白かったな。
過去の展覧会のポスターが会場内に貼ってあったのもよかったな。それもしっかり画鋲で。これも「版」だし。
あとは河原温がたくさんあってびっくり。この人の名前は大阪で知ったんだけど、名古屋にゆかりがある人なんだろうか?これは「版」じゃないんだけど、限りなく「版」に近い何かってことで。この人って不思議なことやってるよなあ。よくわかんないけど嫌いじゃない。
一番最後のが面白かったな。これはネタばれなしで楽しんで欲しいから書かないけど、なるほど!と思った。へー、たしかにこれもある種の「版」だわ。
そしてお楽しみはそれだけじゃなくて。まあ大したことないといえばそうなんだけど、貰ったパンフレットにスタンプ押しまくって帰ってきました。これも「版」よねと。
08-07-28_20-30.jpg

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2008'07.27 (Sun)

誌上のユートピア@愛知

本日最終日の誌上のユートピア@愛知県美術館へ行ってきた。
葉山、うらわ、愛知と巡回してきて、ずっと行くぞ行くぞと思ってて、最終巡回地の最終日になってようやく重い腰を上げて行ってきた。最近すっかり出不精になってていかんなあ。
これ、行ってよかったー。もう、自分の好みにどんぴしゃりで、見たことある絵も多かったけど、見たことない絵も色々あったし、見れてよかったものがたくさんあった。
イギリス、ドイツ、フランスの美術雑誌や挿画本は綺麗だったし、ビアズリーのイエローブックやサロメは面白いし、白馬会から明星、藤島武二、青木繁といった流れも大好きだし、杉浦非水がかわいすぎるし、浅井忠、神坂雪佳も楽しいし、鏑木清方や鰭崎英朋がいたり、最後は月映で締め。
海外の美術雑誌はいつ見ても面白いんだけど、今回はサロメに注目。これも色んなところで見るからお馴染みだけど、なんとなく目に入ったのが、絵の中に描かれている本のタイトル。マノンレスコーとかゾラのナナとかマルキドサドとかそんなんが書いてあった。細かすぎて見るのが大変だったし、全部は読み取れなかったけど、そうだったのかー。ユーゲントがずらっと並んでて、「JUGEND」って文字を各自てんでばらばらのスタイルで書いてて面白い。ココリコがあったけどミュシャはなかった。図録には載ってるので会場によってか期間によっては見れたってことだろうか。
明星の表紙は楽しいなー。今の美的感覚から見るとちょっと怖いところもあるんだけど、気に入ってしまえばそんなの関係ない。武二の絵だーと喜びながら見てた。ロゴマークみたいなのがかわいい。武二といえば、明星以外にも色々と出てて、色んなところでよく見る「婦人と朝顔」はやっぱり綺麗だし「造花」もいいんだけど、絵葉書がよかった。下絵は過去に見たことあるんだけど、完成品は初めて見るかも。これが金銀インクを使っててエンボスもあってすっごくかわいくて保存状態もよくて、欲しい!と思ってしまったよ。いいなー。他にも面白い雑誌の表紙とか挿絵が見られて楽しかった。武二のグラフィックデザイン系の仕事をもっと見てみたい。知りたい。
青木繁は図録には「黄泉比良坂」が載ってるけど展示はなかったような。うーん残念。でも「少女群舞」や「温泉」は面白かったな。
橋口五葉の装丁のお仕事もよかったなー。三越のポスターもいいよねー。
杉浦非水は出血大サービス。たくさんあった。装丁のお仕事から三越の表紙までいーっぱいあった。どれもこれもかわいいなあ。
その後、浅井忠や神坂雪佳周辺が並んだ後に、「「方寸」と創作版画」というコーナーがあったんだけど、ここはあんまりひっかかるものがなかった。ちょっと地味だったかも。
それから日本美術の伝統と新しい流れへの対応みたいなテーマがあって、そこで岡倉天心とか鏑木清方とか鰭崎英朋なんかが出てくるんだけど、ここでも装丁のお仕事で杉浦非水がしょっちゅう顔を出してて面白いなあと思った。ここでまたお馴染みな「妖魚」by福富太郎コレクションと遭遇。よく会うねえ。
その後、白樺とかヒュウザンとか卓上とか出てくるんだけど、この辺も私が弱いところだなあ。そういえばこの辺で長谷川潔を見つけた。まだ渡欧前ってことかな。木版画で小さく。あとは西村伊作って人の謎の抽象画が気になった。最後に恩地孝四郎とか田中恭吉とかが出てきて、やっとちょっとわかるーと喜んだところで展示は終了。
この時代、ビジュアル方面から入ってるので、文学的素養がないのが辛い。夏目漱石とか北原白秋とか萩原朔太郎とかいずれ読みたいものだ。
図録の装丁がとってもよかったので購入。しかし分厚いな。
ついでに常設展示も鑑賞。面白かったのがデヴィッド・シャピロという人。今までに見たことあるのかないのか不明だけど、なんかいいなーと思った。近現代の日本の版画もなかなかよかった。あとはなんか見知った人やらよくわからない作品やらいろいろ。
ところで、ミュージアムショップで高階秀爾著「世紀末芸術」がちくま文庫から再発してるのを発見。
4480091580世紀末芸術 (ちくま学芸文庫 タ 6-4)
高階 秀爾
筑摩書房 2008-07-09

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以前、再版の話があるとは聞いてたけど、こんなに早いとは。大きな変更はなしで、細かい部分の表記の修正とかがある程度らしい。
これは自分が持ってる昔の新書サイズのやつと、古書店で見かけたハードカバーを知ってるけど、文庫にするとちっさー。こんなにコンパクトになっちゃうんだ。

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2008'07.13 (Sun)

冒険王・横尾忠則

兵庫県立美術館で開催中の「冒険王・横尾忠則」を見に行った。
横尾忠則のことは昔はそんなに興味がなかったんだけど(以前、澁澤龍彦展で1960年代あたりの横尾忠則含めたアングラな人たちを見て、あんまり好みじゃないなーとか思ってた)、いつだったか、一枚のポスターを見て、そのユーモアのセンスがツボにはまって以来ちょっと好きになった。適当だなー。
とはいえそんなに詳しいわけでもなく、今回の展覧会でこういうことやってる人なのかーと認識を新たにしたわけだ。グラフィックデザインの領域は有名だからある程度知ってるんだけどね。
展示の最初から比較的新しい作品が展示されてた。Y字路シリーズがどーんと。右と左でいろいろ対比させてるのかなー。冒険ものもでかい。この人の油彩画は好きかといわれるとなんともいえない感じだなあ。でも面白いのは面白い。
入り口のところに、作品中に性的な題材がどうのこうのって注意書きがあって、美術館もいろいろ大変だなーと思った。そういえばこの展覧会の関連イベントで小学生だったかを美術館に呼んでなんかするってのが予定されてたのにそれ系の問題で中止になったとかどこかで読んだような…。
その後、一旦油彩画から離れて、グラフィックデザインの領域へ。ここがボリュームたっぷりで充実してた。私の好みはここだなあ。雑誌の表紙とか挿絵とかポスターとかのデザイン画、色指定とかいろいろ。こんな仕事もしてたのかー。高倉健とか森進一とかいろいろいた。細かい文字まで読んでたら時間がかかりすぎるのであんまり読んでこなかったけど、書いてある文章も本人が考えたものなのかなあ?ライターは別にいるのか。女性週刊誌とかレコードの宣伝文句?とかおもしろいわー。和田誠とのコラボがかわいかったー。
その後、また油彩画に戻る。ルソーへのオマージュが大爆笑。面白すぎるよ。温泉シリーズって一体…。展示室内に温泉マークつきののれんがかけてあって笑った。
という感じでなかなか楽しい展覧会でした。
常設展示も覗いてきた。今回は新収蔵品を中心とした内容で、特定のテーマってのはなかったけど、お気に入り作家さんの作品を見つけて喜んでた。
ミニ企画で「さわれないかたちをさわる」というのが楽しかった。去年もやってた「おさわり」シリーズ?は毎年やってるのだろうか。現代作家さんの彫刻作品を触っちゃおうという企画で、去年は目隠しして触ったけど、今年は普通に目で見て触るというもの。大理石はやっぱり重いんだなーとか、ひっくり返して見るとこんな形に見えるのかとか、木の手触りが気持ちいいなーとか、触覚で感じるアートってのも楽しいよね。
それから、美術館の周辺をうろうろしてみた。ここには何度も来てるのにあんまり外側を見て回ったことってなかったなあと思って。
この先に何があるんだろう?と思って階段を上ってみた。
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なにもなかった。
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屋上みたいな場所がけっこうたくさんあるみたいで、屋外展示場とかなんとか書いてあったけどあんまり使ってないのかな?たまには使ってるんだろうか。
その後、神戸の洋書屋さんでサイケデリックアートの歴史を紐解く本を見つけて買ってしまった。今日の展示と関係はないんだけど、よく考えてみるとちょっと近いかも。
1860742564High Art: A History of the Psychedelic Poster
Ted Owen
Sanctuary Pub Ltd 1999-06

by G-Tools

サイケデリックイメージの源泉ってアールヌーヴォーなんだよね。ミュシャもどきな絵も載ってたし。あの装飾へのしつこいほどの執着ってなんなんだろうなあ。すごいなあと思いながら絵を眺めてるだけでも楽しい。

テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル : 学問・文化・芸術

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