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2013'03.29 (Fri)

ミュシャの世界とパリに咲いたスラヴの華

最近ミュシャ関連の本が続けて刊行されています。私の長いミュシャ歴からすると、ここ2~3年は出すぎってくらい出てるような…。それぞれに特色や見所があるといいんだけど、こう続けて出されるとなかなか特長を見出すのも難しい。
とりあえず最近出た2冊について、簡単なレビューなど。

ミュシャの世界(新人物往来社):A5、¥2,310、159P
4404041810ミュシャの世界
新人物往来社
新人物往来社 2013-02-13

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堺市文化館アルフォンス・ミュシャ館が全面的に協力した本。コラムの執筆陣は、冨田章氏(東京ステーションギャラリー館長/元サントリーミュージアム天保山学芸部長)、白田由樹氏(大阪市立大学/サラ・ベルナール研究)、小野尚子氏(兵庫県美学芸員/スラヴ叙事詩研究)。ちなみにわたくし、この3人ともお目にかかったことがあります。といっても個人的に会ったわけではなく、講演会等でお話を聞いた程度ですが。
堺市のミュシャ館はリピーターだし、執筆者はみなさん関西に縁のある方々だし。というわけで肩入れしまくりの感想になってしまう。
第一印象としては、装丁が好み。人によって好き嫌いがあると思うけど、私はこの、派手過ぎない柔らかい雰囲気が好き。
本文の印刷もよいと思う。過度にコントラストを強調しないところも。そのせいでちょっとくすんだ色合いのものもあるんだけど、それも味よねってことで。A5版だけど、変にトリミングせず紙面を最大限に使って図版を掲載している。かといって全くマージンもなく詰め込んでる風でもなく、抑制が効いてる印象。

構成は以下の通り。
1 パリ時代1―挿絵画家からの飛躍
2 パリ時代2―ポスター画黄金期
3 チェコ時代―アメリカから祖国へ
4 ミュシャの工芸
5 ミュシャ芸術の本質―家族と祖国を愛した時代の寵児

図版のセレクトは標準的かな。堺のドイコレクションを中心に選んでるから、ちょっとしたカタログみたいな受け止め方もできる。1900年の四季が中途半端なのはドイコレにないせいか…。ドイコレ以外の作品も掲載されている。スラヴ叙事詩が全部載っている。
紙面の半分以上はパリ時代に割かれてるし、スラヴ叙事詩が全部載ってる本も最近は増えてきてるので、どうしてもこれじゃなきゃ!な訴求ポイントは図版的にはあんまりないかも。
ただ、ドイコレクションの一点ものが結構載ってるので、コンパクトにその辺の図版を手元に置きたい人にはいいかも。(過去の展覧会の図録とか、三省堂のミュシャ作品集あたりでもカバーしてるけど、ちょっとかさばるので…)
コラムが4本あって、ちょっと内容が被ってるなーという箇所もあったけど(スラヴ叙事詩のコラムと巻末のコラム)、内容は興味深いものとなっている。ミュシャ中毒の私としては何か新しいことが知りたいわけですが、スラヴ叙事詩のコラムはちょっとだけその欲求を満たしてくれる内容となっていました。

ミュシャ パリに咲いたスラヴの華(小学館):B5、¥2,520、128P
4096820784ミュシャ: -パリに咲いたスラヴの華
千足 伸行
小学館 2013-02-22

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「ミュシャ財団秘蔵ミュシャ展 パリの夢、モラヴィアの祈り」開催記念出版だそうな。そんなわけで展覧会の告知ページもあったり、財団からのメッセージもあったりする。監修は千足伸行氏。ミュシャ財団キュレーターの人も寄稿してる。
事前にこの本が出るという話を聞いたときは図録の書籍化かと思ったけど、実物を見てみると違うようで。財団の所蔵品以外も掲載されている。(説明が無い限り財団の所蔵品だって書いてあるけど、ラ・ナチュールはどう見ても堺のの写真なのに何も書いてないのは何事だ。書き忘れ?)

構成は以下の通り。
第1章 パリの華(演劇ポスター/広告ポスター/装飾パネル)
第2章 スラヴの心(民族芸術への回帰/神への思い、故郷への愛情)
第3章 ミュシャの原風景(イヴァンチッツェ/プラハ/ミュシャ・ハウス ほか)

ページ配分は、第1章が約70ページ、第2章が約25ページ、第3章が約20ページとなっている。
一番ボリュームが少ない第3章が一番面白かった。この部分がこの本の特色と言えるかも。第2章もそれなりに面白い。紙面の大半を占める第1章は基本的な事柄なので外せない内容ではあるけど、この本ならではってのは特に無い。コラムはそれなりに面白いけど目新しいことはないかな?でも入門編としてはいいかも。
図版の質は標準的。特にいいとも悪いとも…。図版がどーんなページもあるけど、個人的には読み物的な部分が楽しめる印象かな。
繰り返しになるけど、全体の構成が展覧会の内容に即してるようでもなく、ページ配分からもわかるように華やかな時代が大半を占めているし、コラムとか広告ページがあるとか以外は何がどう「開催記念出版」なのかは謎。
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2013'03.28 (Thu)

三代澤本寿展とBLUE

神戸ファッション美術館で開催中の「型絵染 三代澤本寿」展と、神戸ゆかりの美術館の「BLUE」展を見てきた。
三代澤本寿という人のことはまったく知らなかったんだけど、神戸ゆかりの美術館の展示に興味があったので、同じ建物だし、最近流行の型紙繋がりで民藝との関係もあるらしいので、見に行ってみることに。
http://youkoso.city.matsumoto.nagano.jp/citizensweblog/?p=14754
http://miyosawamotoju.jimdo.com/
http://artscape.jp/report/review/10078619_1735.html
まず民藝との繋がりですが、柳宗悦と芹沢銈介に大きな影響を受けているらしい。
柳に依頼されて手がけた雑誌(?)の表紙が綺麗だったなー。一度に1000とか2000とか摺ってたって(万単位だっけ?忘れた…)、凄いなーと思うけど、この世界では普通なんだろうか?
芹沢銈介は型絵染で有名な人。以前、紅型の展覧会を見たときにちらっと芹沢銈介も出てたけど、なんとなくしか知らないので、いずれちゃんとした形で見た方がいいかもなー。そういえば少し前にどっかで展覧会やってたような…。ちょっと脱線。
バーナード・リーチとも面識があるようで。リーチが描いた三代澤の肖像(スケッチ)があった。それくらい民藝とは近しいところにいた人らしい。
展示されていたものは、色紙サイズの絵から、のれん、屏風、壁掛けパネル、着物、本の表紙など、色んなものがあったけど、一番印象に残ったのは屏風かな。
芹沢の作風はカレンダーとかで多少知ってる程度だけど、あれとも全然違うんだよな。ときどきそれっぽい作品もあったけど、大ぶりの作品で特に顕著だったと思うのは、表面がでこぼこしてて、型の跡がそのまま凹凸になってるようなもの。グラデーションもあまり多用してなくて、わりとはっきりした色合いが多かったような。
型絵染は、布に型染めするのと同じようなことを紙に対してするものらしい。三代澤本寿がよく使っていたのは強製紙で、ごわごわして丈夫そう。これに型紙で糊を置いて、型を外して染料を置いて、水で洗って、という作業をするらしいんだけど、その結果がああなるというのがどうしても理解できなかった。
ステンシルとの違いもよくわからない。型染めってステンシルみたいに型紙の上から染料を置くこともあるんだっけ?この辺がまだよく理解できてない…。表現したい内容によって糊を使い分けてたという説明もあったので、糊を使っていたことは間違いないんだけど。
技法は型染めがメインだけど、ときどき違う技法も使っていて、でもその辺も布の染の技法と似たようなことをしてるのかな?絞りとか。板で挟んで…っていうのも面白かったな。筒染めだっけ?というのも面白かった。
出来上がった作品をただ鑑賞するのもいいけど、私の趣味的には製作過程が気になる…その辺がもっとわかるような展示だったらよかったのにな。最後に少しだけ型紙とか道具の展示もあったけど、染め方の説明はパネルが1枚あっただけ。講演会とか聞きに行けば詳しい説明もあったのだろうか。
型紙を使ってるからには同じものを複数作っていたんだろうか?型紙の再利用で異なる作品を作った例は出てたけど、屏風なんかはひとつひとつが大きいし、これを量産するって考え方は馴染まないような。実際、柳に依頼されて本の表紙を制作した際に、数を作ることで腕が磨かれたみたいな解説もあったし、型紙の表現力だけを重視していたわけではなく職人としての腕もしっかり持っていたということなんだけど…。ケースバイケースなのかなあ?
細かいことはさておき、純粋に作品を見た感想は、チラシで見たより立体感あるな、でした。自分の好みでは平面的なのがいいけど、実物のごつごつした感じも悪くない。しかしこういうマチエールを持つ作品は手触りを確かめたくなるなあ。展示品は当然触れないけど。
とはいえ、基本的には家の中に置く屏風とか、お店の暖簾とか壁用パネルとか、「使う」ものがメインなので、普段から手に取るようなものではないにしろ、「高尚な美術品」よりかは一歩下がって身近な存在なのかなーと思う。
技法は和風だけど案外モダンで洋風建築にも映えそう。森英恵が持ってるという屏風も出てた。今どき屏風を置けるようなお家って一般家庭ではあんまりない気がするけど、お店とか公共空間とかならありかな。
つい作品のマチエールとか製作過程ばっかりに意識が行ってしまったけどデザインも面白かったよ。個人的な好みで行くと柳宗悦に依頼された「工藝」の表紙が一番好きだったけど。いかにも「民藝」って感じのデザイン。
小型のパネル作品なんかはわりと民芸品っぽい雰囲気が出てるものも多かった。着物や帯の布もそこまで奇抜な感じはなかった。
存在感があるのはやっぱり屏風や大型パネルかな。その辺は用途に応じたデザインってことなのかも。屏風は裏側までデザインされているのが面白かった。表とはまた違った雰囲気で素敵。
全体を見れば、和風とか沖縄風とか(紅型からの流れ)民芸風とかそういう雰囲気のものもあったけど、最終的にこの人の特徴は?と考えると、エスニック、または無国籍風なのかなーと感じた。幾何学とも言えなくもないけど、もっと泥臭い感じ。
60歳頃から海外に頻繁に出かけていってその国の民藝的なものを色々と見て自分の作品に反映させたりってことをやっていたそうで、その影響が色濃く出た作品が並んでたけど、それ以前の作品とがらっと変わったわけでもなく、もともとの素養に合っていたのかなと感じた。この人は長野の出身らしいけど、そこに何かあるんだろうか?
三代澤が持ち帰ってきた海外の品々(工芸品?とか服とか布とか)も展示されていて面白かった。ここのベーシック展示との区別がついてない部分もあるけど、ファッション美術館が持ってる関連品も展示されてたと思う。この辺はさすがファッション美術館よねーな部分。
型絵染に限らず、お店のロゴデザインとか空間デザインもやってたらしい。(建築デザインというのか、門扉とかポーチとかのデザインをしたという事例がビデオで流れてた。)
ほんでもって、この人もフィンランドと縁があるのね。晩年、フィンランドに招かれて行ったことがあるらしい。年表にちらっと書いてあっただけなんだけど、どういう経緯なんだろう。(最近フィンランド繋がりの話題が多い。そこに目が行くようになった原因であるフィンランド展の感想がいまだに書けてないんだけど。)
最後に三代澤本寿の愛用品が展示されていた。道具類やスーツなど。その中に指輪があって、この人が絵に入れてたサインと同じようなイニシャルが入ったものが可愛かった。おっしゃれー。なかなかダンディな方だったようで。

てな感じで型絵染を堪能した後は、西村元三朗が見れる!ということで、神戸ゆかりの美術館にも寄ってみた。浮世絵コレクターで有名な中右瑛の作品も見られるということだったし。
展示は中右瑛がメインかな?数が多かった。タイトルどおり青い抽象画。「シェリト・リンド」というシリーズを長年描いているらしい。初期の作品は震災で失われてしまったものも多いらしい。しかしこの人、こっち方面での評価はいかほどのものなのだろう。このシリーズだけ見ててもよくわからない。違う雰囲気の作品もあるのかな。「青」といえばペルシアンブルーだよなー、と「浮世絵」繋がりの人だけに、つい思考がそっちに向かってしまう。(以前見た「西洋の青」展に影響されすぎ。)
この人が作った豆本も展示されていて、浮世絵関係と、竹久夢二関係。さらにその二つのトピックに対するこの人の著書も。コレクターで洋画家で、でも洋画家としての地位がよく見えない…となってくると、一体この人は何者なんだ、というところが気になる。すいません、作品見に来てそんなこと気にしてて。画壇の世界もよーわからんし、見えてないだけで実際は凄かったりするのかなー。
で、私にとってのメインは西村元三朗。去年だか、灘のBB美術館に見に行って以来のファン。それ以前にもどこかで目にはしていたのかな?不思議な建造物のような幾何学構造体のような、謎な絵を描く人。
構造物を描くようになる前の、ちょっとシュルレアリスムっぽいような廃墟のような絵も好きなんだけど、その時代はあまり長くないようで。今回も1枚出てた。神戸を描いた作品。この寂寥とした雰囲気がいいんだよなー。
構造物の絵は似たり寄ったりといえば似たり寄ったりなんだけど、ご本人には色々考えがあるようで、この作品ではこんなことを目指して、この辺は上手くできたとかなんとか、コメントがついてるのが面白い。
BB美術館で見たときに売っていた作品集を見たらそんな絵がずらずらと並んでいて、ここまで徹底してたら天晴れだわと思って以来、なんだか好きになってしまった。好きになる理由なんてホントに些細なものだ。いつかこの人の作品ばかりが壁一面にあるような展覧会を見たいなー。BBのときも展示室の半分だけだったし。囲まれたい!(1997年に神戸で回顧展があったらしい。いいなあ。)
今回は構造物の絵が5枚くらいあったかな?年代も色々で、それぞれ微妙に異なる。その中では比較的初期にあたる作品が好きだったな。淡い色合い。細かい造形。
その2人以外の作品も展示されてた。

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2013'03.19 (Tue)

特別展「田中一光」@奈良県立美術館

3/20まで奈良でやってる田中一光展に行ってきた。
田中一光は、グラフィックデザインに興味がある人なら知らなきゃもぐり!なくらい有名な人。名前は知らなくても見たことあるはず。とはいえ、名前や代表作は知ってても仕事の詳細まで知っている人は少ないかも。かくいう私は知らなかった。アールヌーヴォー好きで、そこからの派生で近代のグラフィックデザイン系の展覧会はよく見てるので、田中一光の作品もちらほらは見たことある程度。
彼の出身地である奈良で大規模な回顧展が開かれると聞いて、奈良の美術館にも一度行ってみたかったので、足を運んでみた。JRまたは近鉄奈良駅から徒歩なので、案外近かった。
展覧会はポスターがメイン。最初に産経観世能のポスターがずらり。そこから時系列というわけでもないのか、色んなポスターが展示されていたり、ポスター以外のグラフィックアート作品も並んでいたり。最後に新発見の資料ということで、子供の頃の習字とか、洋画を習っていた頃の素描とか、油彩画とか、ポスターの版下とか、制作の裏側、創造の原点みたいなものが展示されていた。
産経観世能を見ていて思ったのが、これが昭和30年代のポスターとは思えん、ってこと。これは世代によって感じ方が違うのかもしれないけど、むしろ80年代とか時代が下るほど「時代を感じる」部分が増えてくる。初期の作品でも時代を感じるものはあったりするので、作風によるのかも?
文字に対する拘りも面白かったな。活字を拡大したりして、にじみとかかすれとか、微妙なニュアンスを出すために試行錯誤していたりとか。自分でフォントも作っちゃうんだよね。
ところどころにそういった解説はあるけど、全体的にはあまり細かい説明がなくて、キャプションにはポスターのタイトルだけ、海外のポスターの場合でもそのまんまタイトルだけしか書いてなかったり、不親切といえば不親切。でもその分、純粋にグラフィックだけを鑑賞できるとも言える。なので、量の割にはそれほど時間をかけずに見れた。
グラフィックアートは、クライアントからの依頼とかではなく、自発的に制作していた作品らしい。抽象といえば抽象なのかな。エディション番号がついてたのは頒布してたってことなんだろうか。どれも20とか30とかごく少部数だった。個展を定期的に開いていたそうなので、そのときに頒布してたのか。
グラフィックアートで描かれたモチーフがポスターに現れることもよくあった。どっちが先かよくわからない部分もあるけど。
途中に映像コーナーがあって、田中一光のインタビューとかテレビ出演映像とかが流れていた。制作風景なんかもあって、こんな風に作ってたのかーというのがわかって面白かった。
最後の新発見資料のコーナーで、田中一光の略歴が紹介されていた。吉原治良及び具体との関連は知らなかった!と思ったけど、実際には目に入ってても素通りしてたかも知れない。
田中一光は1930年に奈良で生まれて、家は裕福だったようで、小さい頃から観劇に親しむとか、戦後すぐの時代に京都の美術学校に進んでいたり、割と恵まれてたのねーという印象。就職後はなかなか希望の仕事ができなくて、世情不安から会社を首になったり、苦労はしているみたいだけど。絶望していたとき、吉原治良の緞帳を見て感動したとか。
京都の美術学校では工芸方面を学んでいて、絵画の修行はしていなかったようで、就職後にあらためて洋画研究所に通って勉強していたという辺りは興味深かった。グラフィックデザインっていうと絵画とは別!みたいなことを考える人がいるようだけど、基礎は大事だよー。そっちの腕が一流である必要はないかもしれないけど、何にもしてないのと基礎を勉強してるのとでは全然違う。
鐘淵紡績の意匠部でテキスタイルデザインをしていた頃のものらしい衣装デザイン画があって面白かった。
産経新聞で本意でない仕事をしているとき、自分のために手作りポスターや看板を作ってた、と解説にあったけど、作ったからには何処かに掲示していたのかな?と疑問に思ったんだけど、その後、あれこれ調べていたら謎が解けた。社内の壁に貼ってたらしい。それを目にした吉原治良からスカウトされたという展開がドラマチック。
ご本人は宣伝の仕事にベクトルが向いていて、画家、芸術家としての活動は個展以外ではそれほど積極的ではなかったように見えて、画壇とか具体とかその時代の前衛芸術活動等に作品を出品するみたいなことはしてなかったみたいだけど、吉原治良との縁で、具体関連の書籍の装丁とか、舞台美術とか、そういう形での関わりはあったらしい。
この人のアート系の作品を見ていて、シルクスクリーンの平面的な作品は、後期の泉茂に近いものを感じた。泉茂は1922年生まれだから、田中一光よりひとまわり弱、年長になる。泉茂は具体とはそれほど深く関わってないはずだけど(1959に渡米して60年代はフランスで過ごしてる)、グラフィックデザイン系の人とは親交があったらしいと見た記憶があるし、田中一光が憧れていたという早川良雄は泉茂と繋がりがあるし(デモクラート美術家協会)、どこか共通するものがあるのかも。泉茂が平面的な作風に移行したのはフランス時代後期だったか帰国後だったかだから、どっちが先ってこともないのかな。同時多発的な何かなのかもしれない。吉原治良の円なんかも絵肌は平面だし(雰囲気は全然違うけど)、具体関連でいうと、元永定正もちょっと近い?
この展覧会では、ポスター、グラフィックアート(広告でないグラフィック作品)、それに加えて新発見資料の素描や油彩画、制作過程の版下、といったものが紹介されていたけど、田中一光の仕事はそれだけじゃない、というもっと大規模な展示が東京で開催されていたようで。それも見てみたかったなー。その辺も詳しい本が置いてあったので買ってみた。
490294376X田中一光とデザインの前後左右
小池一子 21_21 Design Sight I
フォイル 2012-09-25

by G-Tools

これを見るといろんなことをやってた人なんだなーとわかる。知らないことがいっぱい。今回の展示にはあまり出てなかったけど、タイポグラフィーとか本の装丁は特に興味がある分野だし、もっといろいろ見てみたいな。

ついでに奈良国立博物館が近かったので寄ってみた。
ちょうどお水取りの季節だからか、お水取りの展示をしていた。ビデオが面白かった。木造の建物であんな火を扱って大丈夫なんだろうかと心配になるけど、箒で火の粉を払ってる人がちゃんといるのね(笑)。展示は昔の記録だったり、儀式に使われる物品だったり、こういう儀式めいたものってよくわからないけど、途絶えさせないぞ!という執念にも似た努力は凄いなあと思った。継続は力なり、という言葉にはもしかするとそういう意味もあるのかも。
仏像館での展示も面白かった。本来は博物館とかじゃなくてお寺とかにあるべきなんだろうけど、昨今は物騒な世の中で盗難にあったりするから致し方ない面もあるようで。
仏像やら観音やらいろいろあったけど、彩色されているものは当時の色合いを見てみたいなあ。鮮やかだったのかなあ。大仏の頭は青いのだろうか。おでこのぽっちはいつ付けられたものなんだろう?十一面観音はなんで頭の上にあんなに乗っかってるんだろう。十二神将の頭の上に十二支が乗ってるのがかわいすぎて困った。
別館の青銅器コレクションも凄かった。ふるーい中国のものらしいけど、あのぐるぐる模様は凄いなあ。模様の変遷も面白くて、儀式が形骸化するにつれて模様も大雑把になっていったというのが興味深かった。
博物館は奈良公園の中にあるんだけど、公園には鹿がたくさんいた。気をつけないと襲われる。適度に距離を保っておけばむこうから突っ込んでくることはないけど、写真でも撮ろうかと近づくと、餌がもらえるのかと勘違いされる。(これは完全にこっち側が悪いです。)近くの車道には「鹿注意」の交通標識が。ほんとにあるんだなー。
公園の中には柵があって、ときどき鹿がその中に入ってたけど、あれは鹿を囲うためというよりは、人が入ってこない場所で鹿がくつろぐ用って感じに見えた。私が帰る頃は日が暮れるちょっと前くらいで、そろそろ鹿もお休みタイムなのか、博物館の建物の傍のやっぱり柵の向こうに何匹も固まって寝そべってたりしてた。
博物館を見た後、ふと田中一光のことを思い出して、こういう土地で育ったんだよな、ということが実感できてよかったかも。
奈良は修学旅行以来かなあ。奈良にも美術館とか色々あるし、むちゃくちゃ遠いわけでもないし、また来たいものだ。

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2013'03.18 (Mon)

クールベ、アンソール、レーピン

関係あるんだかないんだかな3人の展覧会を立て続けに見た。
一応クールベから始まったとされる写実主義に感化された人という意味では繋がってるかな。なのでまとめて感想を書いてしまう。

まずは、クールベ展@大丸ミュージアム梅田。
会期が短いので行けるか怪しかったけど、頑張って行った。30分しか見れなかったけど、見れてよかった。
展示品リストがなかったのでうろ覚えだけど、前半は風景画がほとんどだった、多分。こっちがメインの人だったんだと今更認識。スケッチとか下図みたいなので人物画はあったけど。共作も多かった。亡命後はいろいろあったのね。故郷を思いながら異郷の地を描くなんて、ちょっと切ない。
展示の区切りのところで、デスマスク、手、パレット、煙管などが展示。こんな手をしてたんだ。
後半はクールベ周辺。世間はクールベをどう見ていたか。諷刺画、肖像、オマージュ、縁があった人の作品とか。定番のドーミエやジルもあった。円柱事件ってなんだろ。
クールベの絵を元にした複製画、主に銅版画だったかな?同時代に作られたものがたくさんあった。本物は持って来れんのかい!という突っ込みもあるけど、これはこれで面白い。情報の移動も、人の移動も、今ほど自由じゃなかった頃、当時はこういうもので情報が伝播していったんだよな。
しかしあれほどの人が、政府に追われて、亡命後は上手くいかなくて、程なく亡くなってしまうというのは悲しいね。

で、翌日は、アンソール展@岡山県美。
アンソールといえば、世紀末、象徴派、幻想的、みたいなイメージ。仮面とドクロ。
アカデミックなところからは外れてる人かと思ったら、最初はアカデミックな教育を受けてるのね。初期は写実主義で、クールベにも影響を受けてたとか。前日クールベを見たところだったのでタイムリー。印象派の動向にも注目していて、自分もその中に入りたかった?みたいな。作風は全然違うけど、思いは近いところがあったのかしら。
アンソールはベルギーの人で、パリからは離れていて、直接印象派の作品には触れていなかったようだけれど情報は入ってきていたみたいで、光と影の描き方に拘ったりしていたらしい。ということで初期は風景画や静物画が多かった。牡蠣とか野菜とかいろいろ。ルーベンスを研究したり、フランドルの古典の中にも写実を見つけて感化されてたとか。
肖像画で、画家を正装させることに意味があったみたいで、そういうものなのかーと思ったり。
写実主義なのでシニカルな面があるアンソールですが、妹の絵には愛がこもっていたり、そういうところも人間味があっていいね。
シノワズリもといジャポニズムに傾倒していたというのも面白い。っつか、なんでもかんでもシノワズリと呼んでたって。こら。
あと、意外だなーと思ったのはモンティセリとの共通点。雅宴画みたいなのも描いてたんだ。
その後、グロテスク方面に目覚めて、仮面とドクロの絵を描き始めるわけだ。
展示はアンソール以外の人の作品も交えてアンソールのいろんな面を見せてるんだけど、展示の後半に達しても、そこまでに経過した年月は意外と短い。あれ?と思いつつ解説を読むと、アンソールはグロテスク路線で一躍脚光を浴びた後は、そこから発展することはあまりなかったらしい。
音楽にも関心を注いでいて、楽譜まで展示されていた。
略歴を見てたら、サロンデサンで個展もやってたのねー。ミュシャと同年齢なのか。
一応アンソールの画業を追うような展示にはなってたけど、アントワープの美術館が改装するのでしばらく閉館ってことでアンソールに関わらず色んな作家の作品を大放出。フランドル絵画、リュミニスム、ルーベンス、ブリューゲルなどなど、アンソールとベルギー美術って感じ?アンソール率は案外低かった。
ヤン・トーロップだの、レオン・フレデリックだの、ヴュイヤールだの、世紀末好みには嬉しい作家も。

常設展も見てきた。岡山の美術。日本近代洋画が並んでた。地元作家を中心にいろいろ。地方の美術館ならではの楽しみ。数年前に開催された太平洋画会の図録が面白そうだったけど、でかいし重いし思い留まった。
別企画として野崎家コレクションというものも展示されていた。お屋敷が観光施設にもなっているようで、有名なのかな?昔の貴族かなにかで議員もやってたりした偉い人の家らしい。塩を作ってる会社なのかな?美術品コレクターだったわけじゃなくて自然と集まったというのも凄い。その時代の画家に描いてもらった掛軸とか書とか屏風とか、茶道具、壺、置物やらいろいろ。書はよーわからんけど、富岡鉄斎とかあった。
ミュージアムショップが可愛かった。マッチセット欲しかったけど…
常設展もよかったし、会場内で図録を読んだりしてたら時間を消費しすぎて、次の予定が…ということで、さっさと次の目的地へ移動。時間があればもう少しいろいろ回ってみたかったな。オリエント美術館とか夢二の資料館とか、すぐ近くだったし。岡山城も見れなかった。周辺のお店とかも見てみたかった。新幹線で行くと金はかかるがアクセスはいいので、また良さげな展示があれば、今度はもっとゆっくりしよう。どうせなら倉敷とかまで足を伸ばすのもいいなと思うけど、そこまで行くと日帰りは辛い。

引き続き、レーピン展@姫路市美。
レーピンは名前を知ってる程度でよく知らないけど、19世紀末ならなんでも来いなので行ってみた。肖像画で有名なんだー。それくらい知識がない。
今回わかったことは、レーピンは1844年生まれで、肖像画で有名になって、結構若いうちに名を成している。移動派に属していて、写実主義。労働者を描いたり、社会派だったのね。理想化された世界ではなく現実を描く、みたいな。クールベの写実主義と重なる部分もあるかな?直接の影響関係はわからないけど、時代の空気としての共通性はあるのかなあと。
パリに留学(?)に行ってた時期もあって、印象派に影響を受けて、印象派っぽい絵を描いていたこともある。
家族の絵がかわいいかったな。こういうところはさっきのアンソールとも被る。
ロシアらしい絵ということで、コサックとかロシアの作家の肖像とかがあったかなあ。ムソルグスキーとかトルストイとか。
トルストイではなかったと思うけど、あるとき知人の作家を尋ねたら、その人がちょうど息を引き取ったところに遭遇して、とっさにスケッチしてしまったという話が凄かった。そういえば他にも亡くなる数日前の人の肖像とかあったっけなあ。ムソルグスキーも描いてからそれほど経たずに亡くなったそうだし。
サラ・ベルナールのライバルだったというイタリア人女優、エレオノーラ・ドゥーゼの肖像画がよかった。木炭か何かでさらっと描いたような作品なんだけど、すごくいい。こんなところでサラの名前を見るとは思わなかったなあ。さすが大女優。他にもかっこいい女性の肖像画が幾つかあった。レーピンも描き甲斐のあるモデルを求めていたようで、晩年?は存在感のあるいいモデルがいないと嘆いていたらしい。
へーと思ったエピソードは、レーピンの領地がロシアとフィンランドの境目にあって、晩年、国境が閉じられてフィンランド側になってしまったとか。ガレン=カレラの肖像画を描いたとかで、おお、こないだ見に行ったフィンランド展に繋がってるなー。あっちは陸続きだから、同時代だと案外世界は狭い。
ここで見たのか、アンソール展で見たのか忘れたけど、肖像画をリアルに描くか美化して描くかは、モデルの階級によったらしい。だからどうってことはないんだけど、印象に残ったのでメモしておく。
館内で図録を読んでいたら、「サトコ」という作品が目に留まった。モノクロで小さい図版が載ってただけなんだけど、民話風というのか、ファンタジーのような作風。ご本人も描いてみて違和感があったようで、なんともいえない作品なんだけど、たぶんその時期の流行みたいなもんだったんだろうなあ。山本芳翠の浦島図とか青木繁のわだつみのいろこの宮を思い出した。(画像は適当に探してください)
この展覧会はクールベやアンソールと違って、全部レーピン、レーピンだらけの展示でした。

コレクション展でクールベの海の絵を見た。モンティセリもあった。アンソール展を見た後だと、タイムリーで嬉しい。アンソールとか幻想美術系は姫路の得意分野だと思うんだけど、ここの常設展示は幻想美術系ではないのがちょっと不満。それに毎回大きくは入れ替わらないしなあ。前回来たときとほとんど同じだった気がする。
次の企画展示はベルギー系でちょっと面白そうなので、また来ようかどうか考え中。在来線で行ける範囲だけど、他と掛け持ちだとちょっときつい距離なのが悩みどころ。

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2013'03.13 (Wed)

知られざるミュシャ展 -故国モラヴィアと栄光のパリ- @京都

京都の伊勢丹にある、美術館えきKYOTOで開催中の「知られざるミュシャ」展に行ってきた。(巡回展の情報は文末に。)
3/1から始まっていて、さっそくツイッターで感想が流れているのを見て、いてもたってもいられなくなって翌日行ってきた。
事前に見た宣伝文句では、イヴァンチッツェ近郊に住むチマル家が3代に渡って築き上げたコレクションということだったので、同郷の人ならではのコレクションなのかなと、ぼんやりとはイメージしていたけど、実際に見てみたら凄かった。ただし、これを凄いと感じるかどうかは何を期待しているかによるかな?どちらかというと資料的価値の高い展示内容と言えるかも。
展示の大半はチマルコレクションで、少しだけイヴァンチッツェやブルノの博物館からも来てた。そう、ミュシャの生地の周辺。だから地元ゆかりの作品が多め。それ以外の個人蔵なども少々。
チマルコレクション自体、一般公開されるようになったのがここ何年かのことで、日本で公開されるのも初。その他の所蔵先の作品の中にもお初のものが多いんではないかと。ミュシャの作品は日本でも所蔵している美術館は多いし、リトグラフ等の複製芸術は一点ものじゃないので、展示総数約160点のうち、ここだけでしか見られないものは少ないかもしれないけど、それでもこの展覧会でないと!な作品は幾つかあるし、この機会を逃したら次いつ見れるかということもあるので(現地まで行かないといけなかったり)、マニアなら行け!とだけ言っておこう。

まずはミュシャが10代~20代の頃の作品が並んでいる。作品といっても素描とか出生記録簿だとか、地味といえば地味なものがほとんどだけど。でもね、ミュシャがパリにたどり着く前の作品なんて日本じゃほとんど展示されることもないし、あっても簡単なスケッチくらいのものが多いので、今回の大型素描とか超初期の絵はかなり貴重。あれはお城の装飾をやってた頃のものなのだろうか。
後の壁画的絵画にも繋がるような横長の群像の作品もあった。それほど大きなものではなかったしモノクロだったけど、あれは下絵か何かなのかな?エマホフ城時代のことも謎が多いんだよね。お城が燃えちゃったからなあ。
ウィーンで舞台美術の仕事をしていた頃のものと思しき素描も面白い。作品単体としては特筆すべきものではないのかもしれないけど、資料で読んで知識として持っているだけだったものが目の前にあるんだもの。1880年ごろの絵だけどサインの筆跡が後年と同じだー。当たり前だけどそんなところに注目してみたり。
おっさんの肖像画もあった。ミュシャのプロフィールを読み直すと、その頃肖像画家として生計を立ててたとある。そういう過去があるから、アメリカへ渡った後もその路線を狙ったのかな。成功はしなかったみたいだけど。
ミュシャの初期作品というと、数年前に同じ京都の「えき」で見たモラヴィアギャラリー中心の展示だったか、堺の博物館でやった展示だったかにも少し出てたけど(油彩衝立とかそれほど大きくない横長カラーの絵とか。ネロの火災がどうのいうやつ。)、あれより今回の方が興味深かった。それは私の好みの問題かも知れないけど。鉛筆、チョーク、パステル、インクといった画材によるタッチが好きだからかなー。
完全に資料的価値しかないだろうなものも含めて、こんなものが来てしまうなんて、日本でミュシャが大人気でよかったなーと、妙なところに感謝するのでした。
さらに、パリへ渡ってからも最初のうちは地味に挿絵の仕事などをしているわけですが、そこらへんの展示も充実。挿絵原画もあるよ。モノクロがほとんどで、画材は水彩インクなのかな?この辺のタッチも好きなので嬉しい。どういうお話なんだろうなあ。出版された書籍も展示。こっちは印刷になるけど、昔の印刷物は好きなのでこれはこれで楽しい。
このコーナーにはジスモンダ以降、ポスター画家として成功してからの挿絵のお仕事も展示されていて、でも作風は従来と変わらないもので、ますますミュシャの謎は深まるのであった。言われなきゃわかんない、というより言われても疑うようなタッチのもあるし。自分はミュシャ関連の本は洋書からなにから集めまくってるので主要な作品は見てるはずなんだけど、それでも見たことないものがあって、近年まであまり注目されてなかったコレクションと聞いて納得。
パリスの審判とか、本では見てるけど実物は初めてかも?それと似た作風で、女性が花と戯れてるみたいな絵はリトグラフなのか。図録は濃いめになってるけど淡い色合いだった。
パリでばりばり活躍してた時期でも、しっかりチェコがらみのお仕事もやっていたらしいことも意外。あまりその辺を時系列で考えたことなかったので、そうだったのかーと今更知った。
パリに出た後、一度チェコに戻ってまたパリへ、という経緯も知らなかったなあ。フランスとチェコって近くはないけど断絶されてるほど遠くもなく、コンタクトを取り続けていたんだ。逆にチェコに定住してからも時折パリへ出向くことがあったらしい。
「主の祈り」の一斉展示も。これが、いつもなら装飾ページだけとか、あってもモノクロ挿絵ページまでとかなところが、今回はテキストページまで完全展示!1節ごとに3種類のページを横に並べる展示方法って素敵。マニアにはたまらん…。しかも絵までの距離が近いし。横の人に申し訳ないなーと思いつつも粘って見入ってしまった。テキストページといっても装飾枠がついてたり文字装飾があったり、文字そのものだって綺麗だし、読めなくても見つめていたい。ちなみにこのテキストの内容を英語に直したものが数年前の海外の展覧会図録に載ってた。(最初に仏語版を手に入れた後、英語版の存在を知って悩んだ挙句、近場の本屋にあったので買ってしまったという。言語以外はほぼ同じものを、しかも相当でかい本を2冊も…無駄かと思ったけど無駄じゃなかったわ!)
定番ポスター、装飾パネル系は、割合は少ないけどつぼを押さえてる。サラ・ベルナールものはばっちり揃えてるところは流石。ここのは色が綺麗だなー。
ジスモンダよりずっと前にサラ・ベルナールと接触していたという話は詳しい人なら知ってることだけど、その証拠となるスケッチが展示されていた。クレオパトラのサラ。古い海外の展覧会図録にも載ってたけどそれとは違うもの。サラはサラなんだけど、これを見ててもやっぱりジスモンダには繋がらないんだよなー。なにがどうなってああなるのやら。
ヒヤシンス姫はミニバージョンが。これがとっても可憐。大型の版は何度か見たことあるけどちょっとごついイメージがあるんだけど、冊子サイズのは線も細いし色も繊細だし、かわいい…。
サイズ違いといえば、絵葉書でもサラ・ベルナールものが並んでた。ちっこい。かわいい。椿姫が特に。
装飾パネル類は少なめだったかな。四季のちっこいやつとか一日の時の流れとか、あと何だっけ。
ココリコの表紙が何枚か並んでたけど、その中の1枚の地色が銀だった。すごい!こんなことになってたのか。他の号でもごつごつした紙を使ってたり、変わった紙を使うことを敢えてやってたのだろうか。
定番どころでいうと、サロンデサン第20回展のポスターが出ていたけど、これは何度か見たことがあるはずなんだけど印象が違って見えた。何が違うんだろう…。
ミュシャが渡米した際にニューヨークデイリーニュースに載った記事があった。これは見たことあったけど、記事まで読める状態で展示されてるのは珍しいと思い、読んでみた。長々と絵の前に陣取ってすいません…。一応気を使ってまん前じゃなくて少し斜めの位置に陣取ってたけど。ミュシャをアメリカに紹介する記事なので、プロフィールが書かれてるくらいで、特に面白い内容でもないかなと思ったけど、ホイッスラーの話は面白かった。たぶんどこかで読んだ気がするけどうろ覚え。
ホイッスラーがアトリエかどこかの壁に色んな絵画とともにミュシャのポスターかパネルかを何かをかけていたというエピソードがあって、生徒からなんでこんな紙を貼ってるのかと聞かれて答えた言葉は、愚かな生徒にドローイングとは何かを示すためだ、とかなんとか。(タブローじゃなくてプリントって意味?細かいニュアンスはわからない。)ホイッスラーとミュシャは一時期同じアトリエで指導していたらしいんだけど、この2人の関係をもっと知りたいな。
終盤は、これも最近はおなじみになりつつある、チェコのための作品群。チェコに行くとポスターのタッチも変わるんだけど、これって印刷会社が変わったことも影響してるのかな。アメリカ時代のポスターがアレなのはアメリカの印刷技術が未熟だったからとか書いてあるのを読んだから、チェコも似たような事情なのかなあと思ったり。もちろん表現する内容によって適したタッチを選んでる部分もあるんでしょう。
なんのためのものかは不明だけど素描とかいろいろ。スラヴ叙事詩の準備のためのあれこれだったりするのかな。スラヴ叙事詩の習作も1枚。全体図ではなく部分だったけど。スラヴ叙事詩展のポスターもあった。
ここでもあんまり見たことないものがちらほら。蔵書票とか本の装丁は一応知ってたかな。ものめずらしいというと、長いタイトルの記念版画とかいう大判のリトグラフ。タイトルを見てもなんのこっちゃだし、絵を見てもよくわからない。この辺のお仕事は、身近な人に頼まれてやったものや、思想信条に共感すれば引き受けたということなので、普遍的な内容ではないのかも。
最後に切手が展示されてたり、写真があったり。
ちゃんとした油彩画はフライヤーにも載ってたやつだけかな?個人的には他のインパクトに負けて印象が薄いのですが、解説を読んでみたら本当に個人的なコネクションで制作されたものらしく、出自を知ると興味深く感じる、現金な私でした。
その他、感想としては、会場内のキャプションとか説明文が、なんだか翻訳文章みたいで読みにくかった。すっと頭に入ってこん…。
あと、展示への不満としては、キャプションが間違ってた。ソコルとフォノフィルムが逆だー!チェコ時代の本で上下に並んでたやつがタイトルが逆になってた。
あと、図録掲載作品中、展示されていなかったものも幾つかあったみたい。細かいところは記憶が曖昧だけど、同一書籍から複数ページ分の挿絵が図録に載ってる場合、そのうち一部だけ展示って感じが多いような。
人の感想を読み漁ってて、図録に主の祈りが掲載されていないことを知った。かろうじて表紙のみ掲載。なんでだよ…。あれは展示の中でもかなり異彩を放ってたと思うんだけどなあ。紙面の都合で省略ってことかもしれないけど。(書籍類の展示では、カタログに中身まで全部載らないこともたまにある。)

総括としては、「知られざる」のタイトルに偽りなし、お初のミュシャが満載でした。ただ、油彩画!スラヴ叙事詩!みたいな人には物足りないかもねー。装飾パネル率も低いので、華やかなのにしか興味がない人にも物足りないかもねー。素描好きにはかなり楽しめる。油彩画じゃなくても晩年のミュシャに興味がある人にも結構楽しめるんじゃないかと。でもたぶん一番楽しめるのは、パリ以前のミュシャや、ジスモンダ以前のミュシャに興味がある人。その部分は今までに無い充実っぷりだったと思う。紙ものが好きな人は頭からお尻まで楽しめる。リトグラフいいよねー、木口木版だ!銅版画もなかなか、オフセットはちょっと…みたいなマニアックな楽しみ方も。

図録に掲載されていた論考はなかなか面白くて、千足さんやるじゃん、と思った。前に読んだ本では謎を投げっぱなしにしてて消化不良だったけど、今回はもう少し突っ込んでいた。グラッセの影響、たぶんあるよねえ。ジャンヌダルクのあれは、スタイルだけじゃなくてダメ出しされた部分も含めて意識してたんじゃなかろうか。
もう一人の人の文章もなかなか。若き日のロマンスの話も書いてあった。「イヴァンチッツェの思い出」の人かなあ。(今回は絵葉書が展示されてた。)
あと、注釈を読んでたら、あのサイト(http://richet.christian.free.fr/)の謎が解けた。ミュシャのデータベースみたいな凄いサイトがあって、でも外国語だし情報量が膨大すぎて全貌が掴めなかったんだけど、研究者が情報を持ち寄ってるらしい。
チマルコレクションについての詳細説明も面白かった。単純に地元の人が代々受け継いだコレクションなのかと思ったら、そればっかりじゃなくて、重要な作品が近年になってコレクションに追加されたりもしてるらしい。チマルさん自身、ミュシャの研究をしていて、チマルコレクションを契機にわかってきた新事実なんかもあるらしい。

なお、この展覧会は全国を巡回するようです。(図録に載っていた情報。2013年3月現在)
京都:3/1~3/31 美術館「えき」KYOTO
広島:4/6~7/15 海の見える杜美術館
福井:7/20~9/1 福井市美術館
名古屋:9/7~10/14 松坂屋美術館
横浜:10/19~12/1 そごう美術館
岡山:2014/3/4~3/30@岡山シティミュージアム
三重:4/4~5/18@パラミタミュージアム
青森:5/24~6/29@弘前市立博物館

*この展覧会は、現在東京で開催中の「財団秘蔵 ミュシャ展~パリの夢、モラヴィアの祈り」展とは異なります。主催者も違うし、出展作品の出所も違う。あちらはあちらで全国を巡回するようですが、詳細は公式サイトを参照のこと。

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2013'03.04 (Mon)

西宮大谷の日本画と芦屋のアトリエと具体

西宮市大谷記念美術館で開催していた「40周年記念 日本画 その妙なる世界」と、芦屋市立美術博物館で開催していた「The Collection 具体躍進」展、「The Collection 芦屋の画塾 芦屋のアトリエ」展を見てきた。どっちももう終わってます。

前の週にアートホール神戸で山下摩起展を見て、楽しかったーとツイートしたら、西宮大谷でも山下摩起が展示されているという情報を頂いたので、それなら!と行ってみることに。
今回は、西宮大谷のコレクションから選りすぐりの日本画を展示する展覧会で、キャプションに細かく来歴やら出展歴やらが書かれていた。いいものを持ってるんだぞーという自負?そういうプライドは嫌いじゃないよ。
お目当ては山下摩起なわけですが、それ以外にも素敵な絵がたくさんあった。展示品リストがなかったのでうろ覚えだけど、憶えてる範囲で書いていく。
最初の部屋にまず屏風とかの大型作品が並んでいた。下村良之介の鶏の絵とか。この人は京都国立近美あたりで何度か見たことがあって、結構好き。日本画としては破格だけど、面白い。橋本関雪のでっかい絵があってデジャヴを感じた。前にもこの位置に似たような作品が展示されてなかったっけ?同じ絵かなあ?もうひとつ、大きい屏風絵があって、次にお目当ての山下摩起が!大きな屏風絵で、竹に雪が積もっている。これが噂の、なんとか展で右隻だけが入選した作品らしい。左隻の方が迫力あるような気がしたんだけど、右隻の方が何が描いてあるかわかりやすいから?ぱっと見は、現代人の目から見るとそれほど前衛って感じでもないのかも、と思ったけど、じっくり見るとやっぱり独特よねえ。あの刷毛でさっと描いたようなところがいいな。この人はセザンヌに傾倒していたらしいんだけど、この筆致は確かに…。あと、このフロアには富岡鉄斎のついたてがあったっけな。金色の地がきれいだった。
2階に移動して、もう少し小型の作品がいろいろ。主に山水画とか花鳥画とかそういう系統のもの。2室あって、どっちに何があったかは忘れたけどひとまず印象に残ったものを列挙。川合玉堂がたくさん。冨田渓仙の淀城が妙に気に入ってしまった。ヘタウマじゃないけど、ちょっと崩した感じの絵。展覧会のポスターにも使われてた。菱田春草の絵があった!この人好きなんだよね。なんだろう、色使いとか線とか、とにかく好き。山元春挙の「渓山密雪」は、木の表現がちょっと鬱蒼としたようなところが気に入った。ぱっと見たとき、なんとなく銅版画っぽいような滲んだ感じを受けた。
このフロアにも山下摩起が2枚あって、椿だっけな?お花の絵。一枚は私にとって山下摩起らしいと感じるような感じの絵。これは西宮大谷に長くある絵で来場者にもなじみがある絵、みたいな説明が書いてあった。もう一枚はちょっと暗い色合いだったかな。
また1階に戻って、最後に美人画の類が。上村松園とか伊東深水の美人に見惚れつつ、ここにも山下摩起。大きな作品で女三態みたいなタイトルだったと思うけど、芸者っぽい女性が3人、これまた山下摩起らしい筆致で描かれていた。キュビズムと言っていいかわからないけど、そんな言葉が浮かぶような作風。長らく個人蔵だったらしい。もう1枚、新聞紙の上に描かれたらしい女性図もあった。これは前にも見たことある。そうか、これは山下摩起だったのか。
そしてトリを飾るのは、寺島紫明。晩年の作で、最近所蔵したばかりだとか。この人が兵庫県ゆかりの人らしいというのは明石に行ったときに知ったんだけど、西宮大谷で所蔵するのは初めてらしい。この人も好きなんだよなー。素敵でした。
楽しかったなーと思いつつ、後日、このブログの過去ログを見てたら、2008年にここに来たときに、山下摩起を見て気に入ってたらしいことが判明。すっかり忘れてた…。確かに1枚は見覚えがあったんだけど、屏風も見てたらしい。
ここに来たらお庭も散策しないとね、ってことで、少しうろうろしてから、芦屋へ移動。

芦屋市立美術博物館へ行くのは初めて。「具体」に興味を持ち始めてから、一度は行ってみたいと思ってたけど機会がなくて、ようやく重い腰を上げて行ってきた。住宅地の中にあるので途中ちょっと迷いつつ、なんとかたどり着く。建物がなんとも言えない昭和の香り、とでもいうか。普通の家じゃないのはわかるけど、美術館?と一瞬迷った。きっと昔はモダンだったんだろうなー、みたいな。
以前から存在は知ってたのにようやく行くぞ!と思い立ったのは、最近、具体関連の展示を続けて見たのと、小出楢重も続けて見たことがある。
既に書いたとおり、具体で活動していた上前智祐の展覧会をBBプラザ美術館で見たし、兵庫県美のコレクション展に具体関連の展示があった。そのコレクション展では小出楢重のミニ特集もあった。さらに、先日行った小磯記念美術館の自画像展に小出楢重の自画像も出ていて、印象に残っていた。その流れで、芦屋市美のポスターを見かけて、ちょうど具体&小出関連の展示をやっているらしいと知ったので、よし行こうと思ったわけだ。西宮大谷にも行けたらいいなと思ってたし、方角的に近いからまとめて行ければと。
敷地内には小出楢重のアトリエ(再現)もあった。もともとこの芦屋の地にあったもの。本物は現存しなくて復元ということでした。中に入れるのは楽しいけど、2階がどうなってるか見取り図でもいいからあるとよかったのになー。見えそうで見えないのは焦れる。
企画展示は、美術館として2つ、博物館として1つ、やっていた。博物館的な展示は一応見たけど、見ただけ。
「具体躍進」展は楽しかった。当時の展覧会の様子を紹介した写真パネルとか、作者のコメントとか、当時の熱気を想像しながら見るのも楽しい。
「具体」ってなんとなくひと括りにして見てしまうところがあるけど、実際は作家ごとに個性があるんだよね。まだ数人しか見分けられないけど、何度も見るうちに少しずつわかっていけたらいいな。
先日見た上前智祐とか、作家単位で作風の変遷とかを追うことで見えてくるものもあるし。
ただ、ひとつ思うことは、パフォーマンスアート的なところっていうのはその場に居合わせないと本当には理解できないんだろうなということ。ビンを投げつけたとか足で描いたとか、説明を聞くとなるほどーとは思うけど、表面的な理解に留まってるんじゃないかと自問する。

もうひとつの企画、「芦屋の画塾 芦屋のアトリエ」は、小出楢重、ハナヤ勘兵衛、伊藤継郎、吉原治良の4人を軸にして、洋画、前衛、写真といったジャンルで芦屋に集まった人たちを俯瞰する内容。
小出楢重は、代表作くらいはわかる程度にしか知らないんだけど、今回展示されてた中ではガラス絵が面白かった。あとは、アトリエ建設にまつわる話で、いつでも東京に移動できるように分解組み立てが可能なように作って貰ったとか。でも実際は、小出には気休めにそう言っていただけで、そんなことできないんだけどね、と設計した建築家の人が後に語ってたとかなんとか。小出楢重の知名度はよく知らないんだけど、(兵庫県ゆかりの人だから関西ではよく見るけど、全国的にどうなのかってところ。)生前はそれなりに名を上げてたけど地方の名士では終わりたくない、東京進出したい、みたいなことを考えてたとかで、色々あるんだなーと思った。
ハナヤ勘兵衛はカメラの人。芦屋カメラクラブの話は聞いたことがあったし、たぶん他の美術館(兵庫県美とか、大阪のどっか)で少し見たりもしてたけど、面白くて好き。これがまた時代を見るとびっくり。前衛だなー。
伊藤継郎という人は聞いたことがあるようなないような。芦屋で絵画教室を開いてたりしたらしい。その辺りの展示で櫻井忠剛が出てきてびっくり。初代尼崎市長って。そんな経歴の持ち主とは知らなかった。確か兵庫県美に所蔵されてるよね。洋画の人。
吉原治良は、説明するまでもなく具体の中心的人物。なんだけど、具体の主要メンバーの中ではかなりの年長者だったのね。そこまで差があるとは思ってなかった。私の知識は大阪とか兵庫の美術館のコレクションで単発的に見てる程度なんだけど(具体以前も含めて)、今回の展示では藤田嗣治との関係が紹介されていて、そういう世代なのか…と実感。フジタは戦後はフランスで過ごしたせいで戦後の日本美術の流れとはちょっと違うところにいるから、私の中では、エコールドパリの作家、というイメージで止まってしまっていて、余計に古い人に感じてるんだけど、吉原よりは大先輩だけど直接話す機会がある程度には近い世代なんだなと。
とまあ、そもそも芦屋市美のコレクション展なので当然なんだろうけど、地元びいきな展覧会でした。芦屋というと高級住宅街ってイメージだけど、その歴史がちょっと分かった気がする。ちなみに超高級なのは山の手の方であって、この美術館がある辺りは海寄りなのでまだ普通の住宅地な感じでした。普通とはいっても余裕はありそうな雰囲気だったけどね。近所には文学方面の記念館やらなにやらもあるらしい。

受付付近でミュージアムグッズ等を売っていて、そこに菅野聖子展のカタログが!この人の作品が好きなので飛びついてしまった。いつの間にやってたんだろうと思ったら15年前でした。さすがにその頃はまだ全然具体の具の字も知らなかったな…。
菅野聖子関連記事:
http://www.momak.go.jp/Japanese/collectionGalleryArchive/2010/history/kanno.html
http://www.artcourtgallery.com/images/artists/html_atist/kanno_seiko.html
http://www.jkk.jp/column18.htm

テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル : 学問・文化・芸術

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