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2011'06.20 (Mon)

没後100年 青木繁展―よみがえる神話と芸術

京都国立近代美術館で開催中の青木繁展に行ってきた。
チラシを見てたら英語のサブタイトルがMyth, Sea and Loveになってて、日本語のサブタイトルにはなんで「海」のキーワードが入らなかったのかな?と不思議に思った。
青木繁の代表作といえば「海の幸」と「わだつみのいろこの宮」なわけですが、私はどちらも東京のブリヂストン美術館で見たことがある。それ以前まで青木繁には関心が薄かったんだけど(その時代が好きなのである程度の関心はあった)、そのとき「海の幸」の本物を見て一気に好きになった。額縁の魚もかわいいしね。ミュシャ好きに受けがよさそうなのは「わだつみ~」なんだろうけど、印象に残ったのは「海の幸」だった。ブリヂストン美術館はわりに天井の低い、部屋も小さく区切られてる空間なので、「わだつみ~」を見るにはちょっと窮屈だったかな?超縦長の構図なので上の方はよく見えないし…。でも間近でじっくり見ることができたのでそれはそれでよかった。
昔話はこれくらいにして本題。
今回は没後100年で大規模な回顧展。これだけの規模のものはそうそう開催されるものじゃないというくらいの大盤振る舞い。ただ、28歳で亡くなったこともあって、残ってる作品はそれほど多くないはず。実際、展示されているのは完成作だけでなく、素描や手紙や原稿など資料的なものの割合が高かった。青木繁という「人」に興味があれば十分楽しめる内容かなーとは思う。私が行ったときはひとつの作品の前に長く留まって熱心に見てる人が多かったな。
会場に入るとすぐに目に入ってくるのは「わだつみのいろこの宮」。近代美術館は天井が高いので全然余裕の配置。ただ、ライティングのせいで最前列に陣取ったときに絵の真正面に立たないと光って見えないという問題が…。すいてるときはいいけど、混雑してると困るなあ。離れて見れば角度の問題は解消されるのかもしれないけど、ちゃんと確認してないのでわからない。床の間みたいな展示状態だったので最接近しても1m以上の距離があったのが不満。とはいえ背が高い作品だから多少距離を置いて見るのが正解なんだろうけど。脚立でも持ってきて上の方を間近でじっくり見たいなあなんて妙なことを考えてしまった。それともオペラグラスで見る?
その後は時代順の展示。さっき、ここの天井は高いと書いたけど、ずっと作品を見て回ったときに感じたのは、ちょっと天井高すぎるなあということ。素描類が多いこともあるし、大作といってもそれほど大きなものがないし、ブリヂストン美術館で見たイメージが強いからかも。
最初の方には水彩画や素描が並んでた。スケッチ旅行の様子とか、ちょっと漫画風でかわいかった。
手紙の類がたくさんあって、手書き文字は判読が難しいものが多かったけど、キャプションにある説明を見ながら文字を拾い読みしたらそこそこ読めた。最後の方で遺言的な手紙まで本物が展示されてたのにはちょっと感傷的になるね。遺書的な手紙は便箋ではなく巻物でかなり長いんだけど、読もうと文字を追いかけてるうちに、今自分の目の前にあるこの紙に向かって筆や鉛筆を持って書いてたんだよなあ、と不思議な気持ちに。100年も前のものだけど紙も綺麗でそれほど古びてもなく、なんだか不思議な気持ちになった。考えてみたら壁にかかってる絵も同じことなんだけど、生々しい手紙だから余計そんな風に感じたのかな。
青木は、生き方は全然違うけど画風がなんとなく藤島武二と近いイメージがあって、同世代のような感覚でいたんだけど、青木が美術学校に入ったときに武二が既に先生として在籍していたというのを知って、ちょっと意外に思った。活動時期からそれくらいのことわかってたはずなんだけど。黒田清輝を基準に考えたら確かに青木の方が若いという認識はあるのに、黒田と同世代のはずの武二がどっちの世代にも属してるイメージがあるから混乱している。
展示されている絵の中では、印象派的なタッチの海の絵が幾つもあるのが目に付いた。モネを消化したとかなんとか書いてあったけど、モネは晩年の蓮に頭を埋め尽くされている自分にはなんとも判断しがたい。ただ、後期印象派のスタイルになるのかな?点描(筆触分割だっけ)のやり方が絵ごとに少しずつ違ってて、最初にあったのよりは後の方のがよかったな。海の絵で異色だったのが板に焼け釘で描いたもの。ドローイングみたいな感じ。絶筆も海の絵だったけど、タッチはかなり違う。これは絶筆展で見たっけな。ひび割れは修復できないのかなあ。青木の絵は貧乏で画材にも事欠く状況だったから十分な仕上げもできなくて保存が大変みたいなことがどこかに書いてあったっけ。
「海の幸」は2度目だからかインパクトは少なめ。ここで会場の広さをちょっと恨む。せっかくなので絵をじっくり眺める。真ん中の男性と左隣の老人がそこそこしっかり描き込まれていて、中心から離れるにつれて線が曖昧になってくる。福田たねの顔と言われている部分は宙に浮いたような不思議な描き方。印刷物で見たときには未完成なところが気になるのに、実物を目の前にすると全然気にならないのは不思議だなあ。
主題として好みなのは神話とか歴史画のあたりかな。日本神話の名称は覚えにくい、書きにくい。片乳出してる(品の無い表現)やつが特によかったな。あと、黄泉比良坂とか、象徴主義というのか、輪郭がはっきりせず、観念的なイメージがある絵が幾つかある。ここはミュシャブログなのでミュシャを引っ張り出す。ミュシャの象徴主義的な絵というのはあまり有名ではないけど、1900年ごろにパステルで描いた怪しげな絵がある。ちょっとその辺に雰囲気が近いのかなーと思った。これも神話の流れになるのか、宗教とか民族っぽい絵とかも面白かった。
文学との交流に関しても少し展示があったけど、これをもう少し見たかった。雑誌の表紙とか本の挿絵、装丁って青木はそれほどたくさんは手がけてないんだっけ?肉筆ではないから優先順位が下げられたのだろうか。かるたもかわいかったな。装飾系のお仕事は見てて楽しい。図録を眺めてたら、前期には展示されてなかったしおりの絵がミュシャもどきだった。もうひとつ前期は展示されてなかった布に描いたアレを見たい。扇の絵もかわいいなー。
郷里に戻る少し前くらいの時期の、福田たねとの合作で、厚塗りの絵で女性の横顔(ちょっと斜め)を見てちょっと藤島武二っぽいかなーと思ったりした。「女の顔」はちょっとエゴン・シーレっぽかった。
友人との手紙のやりとりがたくさん紹介されていて、熊谷守一の名前が出てきてちょっと意外。仲良かったのか。熊谷守一も今ひとつどの時代の人かって感覚が曖昧で、青木と近いんだなー。
あと、どの辺にあったのか忘れたけど、参考資料的に当時の美術書の、バーンジョーンズの階段に女性が並んでる絵(タイトル忘れた)のページが展示されていて、昔の人はこういうのを見て西洋美術に触れてたんだなーと思ったり。
晩年の作品群はどうしても印象が弱い。肖像画が多かった。その頃の絵で、和田英作の「こだま」にちょっと似てるかなーと思ったのがあった。森の中に佇む女性像って他にもあるから特に誰に似てるってわけでもないのかもしれないけど。
没後のあれこれに1章を割いていた。
青木はたねと息子のことを家族には話していなかったようで、死後にそのことを知って驚いてるお母さんの手紙があったりして、ちょっと面白かった。
青木の息子に関する雑誌の記事があったり。墓の前に泣き崩れる美少年…みたいな挿絵つき。たねさんは青木の死後、別の人と結婚したからなのか、息子が大きくなるまで青木との関係は黙ってたみたい。図録には文章だけでイラストまで載ってないのが残念。おもしろかったのにー。(こちらのブログに再現イラストが。http://tfreak.cocolog-nifty.com/theshowmustgoon/2011/06/post-a1ee.html)
石橋コレクションの経緯について知ることができたのもよかった。青木は生前はあまり評価されることなく、「海の幸」は評判良かったけど、「わだつみ~」であまり評価を得られなかった後は、顧みられることもなかったらしい。でも友人たちが青木の作品を残すために奔走したり、青木の評論を出版することで世間での評価を高めたり、こういった理解者の尽力があってこそ、今わたしたちが青木の作品を楽しめてるんだなと思うと、感慨深いものがある。生前に名の売れた画家も没後にその名を残そうとする人がいないと忘れ去られてしまうというのはよくあることだし、その意味では青木は幸せだよな。
その評論を書いた人が以前この美術館の館長だったというのに驚いた。その縁でここで展覧会が開催されたわけね。
展示の最後に、青木繁がどのように受容されていったのかの参考資料として比較的最近の教科書類が置いてあった(図録には掲載されてないのが残念)。美術とか歴史とか図工とかの教科書(資料集)に載ってるんだね。自分のときはどうだったんだろうなあ。学生のころは日本の近代美術には全然興味なかったし、西洋美術もルネサンス辺りはちょっと好きだったけど教科書に何が載ってたかなんて全然覚えてないわ。ここ数年、日本の近代美術に興味を持ち始めてから目にする機会があったけど、「海の幸」を印刷物で見てもそれほど強い印象がなかったし、青木繁の名前も「海の幸」のことも、いつ存在を知ったか覚えてない。
展示されてた教科書とかの資料類も図録に載ってたら面白かったのになー。

常設展示室でも関連展示をやっていた。青木と親しかった坂本繁二郎の特集があった。浅井忠とかの工芸系も並んでたけど、関連といいつつ微妙な関連度合いだなーと思った。好きだからいいけど。森村の映像作品があったんだけど、時間の関係で見ることができず。リベンジしたいなー。前期後期で作品の入替があるみたいだし、後期も行こうかなあ。でも京都、遠いんだよなー。
アンセル・アダムスの写真が並んでた。この人の写真って綺麗だよなー。白が綺麗。薄暗いところもしっかり見えるのが凄い。風景の切り取り方も素敵だけど、現像技術というのか、技術だけとっても凄いよなあ。ふと木口木版を思い出した。あれも白と黒のコントラストが綺麗なんだよねー。
あとは初夏の日本画もきれいだった。福田平八郎とかいろいろ。

2階会場出口の売店で図録を買ったんだけど、その後、1階の売店を見てたらこんな本があって、つい買ってしまった。青木の絵も大きく掲載されてる。
458292154X近代日本の画家たち―日本画・洋画美の競演 (別冊太陽 日本のこころ 154)
平凡社 2008-07-23

by G-Tools

図版が沢山載ってていいかなーと思ったんだけど、コラムがなかなか面白かった。ただ、掲載作家が思ったより少なくて残念。と言っても人数的には十分だと思うんだけど、個人的にもっと色んな人の絵が順序だてて並んでると便利なのになーと。日本の近代画家の展覧会の図録は何冊か持ってるんだけど、いざ誰それの絵を見たいなと思ってもどこに載ってるかわかんなくて困るので、リファレンスに使える本が欲しいなあ。

ところで、前売り券は会期前しか売ってないって、こないだカンディンスキーのときに残念がってたんだけど、これも同じらしい。なに?最近は関西もそういう風潮になってるの?
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テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル : 学問・文化・芸術

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