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2012'05.26 (Sat)

熊谷守一展 小さな画面に無限の世界

伊丹市立美術館で5/27まで開催の熊谷守一展に行ってきた。
熊谷守一は同郷のよしみもあるし、画風も好きなので、普段から気にしている画家です。
日本の近代美術に興味を持って色々見てると、その中で色んな流派というか、団体として活動してるしてないに関わらず、こんな運動、世間の流れ、潮流があって、こんな人たちが関わってて、みたいな繋がりが見えてきたりするんだけど、熊谷守一という人は、そういう中に名前が出てくるにもかかわらず、不思議とその中の一員という印象を抱くことがなくて、自分の中の位置づけもよくわからなかったりする。
その風貌からなのか、富岡鉄斎とダブって見えることがある。
去年だっけ、青木繁展があったときに、青木が一目置いてたり、手紙のやりとりをしてた相手として熊谷の名前が出てきて、青木と同時代人というのがすごく意外で、なんでそんな風に感じるのかな、という辺りが、今回の展覧会で少しわかった気がする。
ひとつは長生きしたことだろうね。若い頃は藤島武二に師事し、青木と同じ教室で学び、いかにも「明治の洋画」な絵も描いてたりする。その路線で進んでたら、たぶん違和感なく「その時代の人」と感じられただろうな。でも、熊谷自身にあまり「売る絵を描く」という欲がなくて、家の事情であまり絵に携わっていなかった時期もあったりして、本格的に独自の画風に目覚めるのが、50代も後半になってから、という辺りが、明治の画家という印象があまりない一因なのかな。
スタイルが固まった頃というのは、世間では前衛芸術なんかも盛んな時代だったと思うけど、それに近いところもあるとは思うけど、極端にアバンギャルドでもないし、かといってアカデミックとも遠いところにいるし、世間の動向とは一線を画してる、時代性がないことはないんだろうけど希薄?な印象がある。
描く対象が、静物画、風景画、人物画、どれにおいてもある程度抽象化されてて、あまりモデルの個性を出していないから、あまり時代を感じないことになるのかも。でもちゃんと特徴は掴んでるんだよなあ。猫好きとしてはポスターにもなってた猫の絵が可愛すぎて困る。
日本画や書に関しては、油彩画とはまったく異なるスタイルなので、上に書いたことがそのまま当てはまるわけではないかな。スタイルは違っても、対象を見る目というのは同じなので、絵から受ける印象は大きくは変わらない、かな。たぶん。(語れるほど得意分野じゃないので偉そうなことは言わないが吉)
ふと、その前の週に行った村山知義の生没年を見たら、ほとんど被ってるんだ。村山の方が20歳若いけど、没年は同じ。

会場は伊丹市立美術館と伊丹市立工芸センターの2会場ぶち抜きでした。展示作品数は約150点、一気に見るのは大変な気がするけど、明快な作品が多いからか、疲れることなく見れました。
実際に大量の作品をじっくり見てみて発見だったのが、平面的なんだけど、ただの平面じゃないってところかな。たとえば一色で塗りこめている部分も、筆の跡が残っていて、そこにリズムを感じたり。それと、輪郭線が、ただ輪郭を線で描いているわけじゃなくて塗り残しによるものだったり。キャンバス(画布)ではなく板に描いたものが多くて、板目が見えてたりするのが面白かった。
スタイルが定まってからも、少しずつ変化はしてるのね、という辺りがたくさんの作品を見ることで理解できた。それが大規模展覧会のいいところ。
熊谷の生涯というのも、今までそれほど詳しく調べたこともなかったのでよく知らなかったんだけど、複雑な生まれ育ちだったり、大人になってからもいろいろあったりしたんだなあと。
ヤキバノカエリという作品は、岐阜県美術館の所蔵品で、前に見たことがあったんだけど、あの絵の背景にそんなことがあったとは…。
数は少ないけど下図も展示されてて、作品はシンプルだけどあんなふうに構成を練ってから描いてるんだなと、当たり前かもしれないけど忘れがちなことを気づかせてくれた。
今まではなんとなく知ってる程度だった熊谷について、より深く知ることができて、いい展覧会でした。

グッズ売り場には何故か猫グッズがいっぱいあった(笑)いや、まあ、関係ないことはないけどさ。そういえば去年のシャノワール展でも似たような状況だったような。
リトグラフだかシルクスクリーンだかの複製画もあった。油彩画を版画にしてもなーと思いつつよく見ると意外と(失礼)いい出来だった。お値段はそれなりだし、買うつもりはないけど。
図録は迷ったけど、最近本を買いすぎて置く場所なくなりそうなので、今回はパス。でも別のハードカバーを買っちゃったんだけどね。図録よりは容積が小さいから…と言い訳しつつ、熊谷の評伝を。熊谷と周辺人物との関係なんかも書かれてるっぽかったので、熊谷の生きた時代に興味がある私にとっては面白そうな本かなと思って。しかし、いつ読めることやら。
4763009389無欲越え―熊谷守一評伝 (「美」の人物伝)
大川 公一
求龍堂 2009-11

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