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2013'03.13 (Wed)

知られざるミュシャ展 -故国モラヴィアと栄光のパリ- @京都

京都の伊勢丹にある、美術館えきKYOTOで開催中の「知られざるミュシャ」展に行ってきた。(巡回展の情報は文末に。)
3/1から始まっていて、さっそくツイッターで感想が流れているのを見て、いてもたってもいられなくなって翌日行ってきた。
事前に見た宣伝文句では、イヴァンチッツェ近郊に住むチマル家が3代に渡って築き上げたコレクションということだったので、同郷の人ならではのコレクションなのかなと、ぼんやりとはイメージしていたけど、実際に見てみたら凄かった。ただし、これを凄いと感じるかどうかは何を期待しているかによるかな?どちらかというと資料的価値の高い展示内容と言えるかも。
展示の大半はチマルコレクションで、少しだけイヴァンチッツェやブルノの博物館からも来てた。そう、ミュシャの生地の周辺。だから地元ゆかりの作品が多め。それ以外の個人蔵なども少々。
チマルコレクション自体、一般公開されるようになったのがここ何年かのことで、日本で公開されるのも初。その他の所蔵先の作品の中にもお初のものが多いんではないかと。ミュシャの作品は日本でも所蔵している美術館は多いし、リトグラフ等の複製芸術は一点ものじゃないので、展示総数約160点のうち、ここだけでしか見られないものは少ないかもしれないけど、それでもこの展覧会でないと!な作品は幾つかあるし、この機会を逃したら次いつ見れるかということもあるので(現地まで行かないといけなかったり)、マニアなら行け!とだけ言っておこう。

まずはミュシャが10代~20代の頃の作品が並んでいる。作品といっても素描とか出生記録簿だとか、地味といえば地味なものがほとんどだけど。でもね、ミュシャがパリにたどり着く前の作品なんて日本じゃほとんど展示されることもないし、あっても簡単なスケッチくらいのものが多いので、今回の大型素描とか超初期の絵はかなり貴重。あれはお城の装飾をやってた頃のものなのだろうか。
後の壁画的絵画にも繋がるような横長の群像の作品もあった。それほど大きなものではなかったしモノクロだったけど、あれは下絵か何かなのかな?エマホフ城時代のことも謎が多いんだよね。お城が燃えちゃったからなあ。
ウィーンで舞台美術の仕事をしていた頃のものと思しき素描も面白い。作品単体としては特筆すべきものではないのかもしれないけど、資料で読んで知識として持っているだけだったものが目の前にあるんだもの。1880年ごろの絵だけどサインの筆跡が後年と同じだー。当たり前だけどそんなところに注目してみたり。
おっさんの肖像画もあった。ミュシャのプロフィールを読み直すと、その頃肖像画家として生計を立ててたとある。そういう過去があるから、アメリカへ渡った後もその路線を狙ったのかな。成功はしなかったみたいだけど。
ミュシャの初期作品というと、数年前に同じ京都の「えき」で見たモラヴィアギャラリー中心の展示だったか、堺の博物館でやった展示だったかにも少し出てたけど(油彩衝立とかそれほど大きくない横長カラーの絵とか。ネロの火災がどうのいうやつ。)、あれより今回の方が興味深かった。それは私の好みの問題かも知れないけど。鉛筆、チョーク、パステル、インクといった画材によるタッチが好きだからかなー。
完全に資料的価値しかないだろうなものも含めて、こんなものが来てしまうなんて、日本でミュシャが大人気でよかったなーと、妙なところに感謝するのでした。
さらに、パリへ渡ってからも最初のうちは地味に挿絵の仕事などをしているわけですが、そこらへんの展示も充実。挿絵原画もあるよ。モノクロがほとんどで、画材は水彩インクなのかな?この辺のタッチも好きなので嬉しい。どういうお話なんだろうなあ。出版された書籍も展示。こっちは印刷になるけど、昔の印刷物は好きなのでこれはこれで楽しい。
このコーナーにはジスモンダ以降、ポスター画家として成功してからの挿絵のお仕事も展示されていて、でも作風は従来と変わらないもので、ますますミュシャの謎は深まるのであった。言われなきゃわかんない、というより言われても疑うようなタッチのもあるし。自分はミュシャ関連の本は洋書からなにから集めまくってるので主要な作品は見てるはずなんだけど、それでも見たことないものがあって、近年まであまり注目されてなかったコレクションと聞いて納得。
パリスの審判とか、本では見てるけど実物は初めてかも?それと似た作風で、女性が花と戯れてるみたいな絵はリトグラフなのか。図録は濃いめになってるけど淡い色合いだった。
パリでばりばり活躍してた時期でも、しっかりチェコがらみのお仕事もやっていたらしいことも意外。あまりその辺を時系列で考えたことなかったので、そうだったのかーと今更知った。
パリに出た後、一度チェコに戻ってまたパリへ、という経緯も知らなかったなあ。フランスとチェコって近くはないけど断絶されてるほど遠くもなく、コンタクトを取り続けていたんだ。逆にチェコに定住してからも時折パリへ出向くことがあったらしい。
「主の祈り」の一斉展示も。これが、いつもなら装飾ページだけとか、あってもモノクロ挿絵ページまでとかなところが、今回はテキストページまで完全展示!1節ごとに3種類のページを横に並べる展示方法って素敵。マニアにはたまらん…。しかも絵までの距離が近いし。横の人に申し訳ないなーと思いつつも粘って見入ってしまった。テキストページといっても装飾枠がついてたり文字装飾があったり、文字そのものだって綺麗だし、読めなくても見つめていたい。ちなみにこのテキストの内容を英語に直したものが数年前の海外の展覧会図録に載ってた。(最初に仏語版を手に入れた後、英語版の存在を知って悩んだ挙句、近場の本屋にあったので買ってしまったという。言語以外はほぼ同じものを、しかも相当でかい本を2冊も…無駄かと思ったけど無駄じゃなかったわ!)
定番ポスター、装飾パネル系は、割合は少ないけどつぼを押さえてる。サラ・ベルナールものはばっちり揃えてるところは流石。ここのは色が綺麗だなー。
ジスモンダよりずっと前にサラ・ベルナールと接触していたという話は詳しい人なら知ってることだけど、その証拠となるスケッチが展示されていた。クレオパトラのサラ。古い海外の展覧会図録にも載ってたけどそれとは違うもの。サラはサラなんだけど、これを見ててもやっぱりジスモンダには繋がらないんだよなー。なにがどうなってああなるのやら。
ヒヤシンス姫はミニバージョンが。これがとっても可憐。大型の版は何度か見たことあるけどちょっとごついイメージがあるんだけど、冊子サイズのは線も細いし色も繊細だし、かわいい…。
サイズ違いといえば、絵葉書でもサラ・ベルナールものが並んでた。ちっこい。かわいい。椿姫が特に。
装飾パネル類は少なめだったかな。四季のちっこいやつとか一日の時の流れとか、あと何だっけ。
ココリコの表紙が何枚か並んでたけど、その中の1枚の地色が銀だった。すごい!こんなことになってたのか。他の号でもごつごつした紙を使ってたり、変わった紙を使うことを敢えてやってたのだろうか。
定番どころでいうと、サロンデサン第20回展のポスターが出ていたけど、これは何度か見たことがあるはずなんだけど印象が違って見えた。何が違うんだろう…。
ミュシャが渡米した際にニューヨークデイリーニュースに載った記事があった。これは見たことあったけど、記事まで読める状態で展示されてるのは珍しいと思い、読んでみた。長々と絵の前に陣取ってすいません…。一応気を使ってまん前じゃなくて少し斜めの位置に陣取ってたけど。ミュシャをアメリカに紹介する記事なので、プロフィールが書かれてるくらいで、特に面白い内容でもないかなと思ったけど、ホイッスラーの話は面白かった。たぶんどこかで読んだ気がするけどうろ覚え。
ホイッスラーがアトリエかどこかの壁に色んな絵画とともにミュシャのポスターかパネルかを何かをかけていたというエピソードがあって、生徒からなんでこんな紙を貼ってるのかと聞かれて答えた言葉は、愚かな生徒にドローイングとは何かを示すためだ、とかなんとか。(タブローじゃなくてプリントって意味?細かいニュアンスはわからない。)ホイッスラーとミュシャは一時期同じアトリエで指導していたらしいんだけど、この2人の関係をもっと知りたいな。
終盤は、これも最近はおなじみになりつつある、チェコのための作品群。チェコに行くとポスターのタッチも変わるんだけど、これって印刷会社が変わったことも影響してるのかな。アメリカ時代のポスターがアレなのはアメリカの印刷技術が未熟だったからとか書いてあるのを読んだから、チェコも似たような事情なのかなあと思ったり。もちろん表現する内容によって適したタッチを選んでる部分もあるんでしょう。
なんのためのものかは不明だけど素描とかいろいろ。スラヴ叙事詩の準備のためのあれこれだったりするのかな。スラヴ叙事詩の習作も1枚。全体図ではなく部分だったけど。スラヴ叙事詩展のポスターもあった。
ここでもあんまり見たことないものがちらほら。蔵書票とか本の装丁は一応知ってたかな。ものめずらしいというと、長いタイトルの記念版画とかいう大判のリトグラフ。タイトルを見てもなんのこっちゃだし、絵を見てもよくわからない。この辺のお仕事は、身近な人に頼まれてやったものや、思想信条に共感すれば引き受けたということなので、普遍的な内容ではないのかも。
最後に切手が展示されてたり、写真があったり。
ちゃんとした油彩画はフライヤーにも載ってたやつだけかな?個人的には他のインパクトに負けて印象が薄いのですが、解説を読んでみたら本当に個人的なコネクションで制作されたものらしく、出自を知ると興味深く感じる、現金な私でした。
その他、感想としては、会場内のキャプションとか説明文が、なんだか翻訳文章みたいで読みにくかった。すっと頭に入ってこん…。
あと、展示への不満としては、キャプションが間違ってた。ソコルとフォノフィルムが逆だー!チェコ時代の本で上下に並んでたやつがタイトルが逆になってた。
あと、図録掲載作品中、展示されていなかったものも幾つかあったみたい。細かいところは記憶が曖昧だけど、同一書籍から複数ページ分の挿絵が図録に載ってる場合、そのうち一部だけ展示って感じが多いような。
人の感想を読み漁ってて、図録に主の祈りが掲載されていないことを知った。かろうじて表紙のみ掲載。なんでだよ…。あれは展示の中でもかなり異彩を放ってたと思うんだけどなあ。紙面の都合で省略ってことかもしれないけど。(書籍類の展示では、カタログに中身まで全部載らないこともたまにある。)

総括としては、「知られざる」のタイトルに偽りなし、お初のミュシャが満載でした。ただ、油彩画!スラヴ叙事詩!みたいな人には物足りないかもねー。装飾パネル率も低いので、華やかなのにしか興味がない人にも物足りないかもねー。素描好きにはかなり楽しめる。油彩画じゃなくても晩年のミュシャに興味がある人にも結構楽しめるんじゃないかと。でもたぶん一番楽しめるのは、パリ以前のミュシャや、ジスモンダ以前のミュシャに興味がある人。その部分は今までに無い充実っぷりだったと思う。紙ものが好きな人は頭からお尻まで楽しめる。リトグラフいいよねー、木口木版だ!銅版画もなかなか、オフセットはちょっと…みたいなマニアックな楽しみ方も。

図録に掲載されていた論考はなかなか面白くて、千足さんやるじゃん、と思った。前に読んだ本では謎を投げっぱなしにしてて消化不良だったけど、今回はもう少し突っ込んでいた。グラッセの影響、たぶんあるよねえ。ジャンヌダルクのあれは、スタイルだけじゃなくてダメ出しされた部分も含めて意識してたんじゃなかろうか。
もう一人の人の文章もなかなか。若き日のロマンスの話も書いてあった。「イヴァンチッツェの思い出」の人かなあ。(今回は絵葉書が展示されてた。)
あと、注釈を読んでたら、あのサイト(http://richet.christian.free.fr/)の謎が解けた。ミュシャのデータベースみたいな凄いサイトがあって、でも外国語だし情報量が膨大すぎて全貌が掴めなかったんだけど、研究者が情報を持ち寄ってるらしい。
チマルコレクションについての詳細説明も面白かった。単純に地元の人が代々受け継いだコレクションなのかと思ったら、そればっかりじゃなくて、重要な作品が近年になってコレクションに追加されたりもしてるらしい。チマルさん自身、ミュシャの研究をしていて、チマルコレクションを契機にわかってきた新事実なんかもあるらしい。

なお、この展覧会は全国を巡回するようです。(図録に載っていた情報。2013年3月現在)
京都:3/1~3/31 美術館「えき」KYOTO
広島:4/6~7/15 海の見える杜美術館
福井:7/20~9/1 福井市美術館
名古屋:9/7~10/14 松坂屋美術館
横浜:10/19~12/1 そごう美術館
岡山:2014/3/4~3/30@岡山シティミュージアム
三重:4/4~5/18@パラミタミュージアム
青森:5/24~6/29@弘前市立博物館

*この展覧会は、現在東京で開催中の「財団秘蔵 ミュシャ展~パリの夢、モラヴィアの祈り」展とは異なります。主催者も違うし、出展作品の出所も違う。あちらはあちらで全国を巡回するようですが、詳細は公式サイトを参照のこと。
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テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル : 学問・文化・芸術

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